SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.6, Dec. 2001

10. カナダITER誘致に名乗り
_ITERカナダ_


 ロッド・アービン・カナダ駐露大使は、6月7日モスクワでカナダの正式ITER(国際熱核融合実験炉建設計画)誘致立候補を行った。ロシア、日本、欧州連合、アメリカ代表団へのプレゼンテーションでアービン大使はオンタリオ湖北岸、トロントの真東に位置するクラリントンに核融合施設を建設する事を提案した(Superconductor Week誌7月2日号)。

 カナダのプロジェクト招聘活動を率いる組織、ITERカナダの会長でCEO(最高経営責任者)のピーター・バーナード博士は「カナダ連邦政府の支援、オンタリオ州政府からの支持、さらに民間団体、労働団体、大学、及び地元団体メンバーからの弛まぬ確約により、ITERカナダがこのプロジェクトの勝利を我が国にもたらす非常に有力な立場にあると信じている」と語った。

 ITERカナダは1997年産業界(当初オンタリ電力公社)、政府、労働団体、大学のメンバーから成る非営利団体である。その提案は、カナダの分担としてトロントから東へ1時間に位置するオンタリオ北岸の65,000万ドルに値する敷地を含んだものである。カナダ連邦政府から財政的裏付けはないが、オンタリオ州政府は操業30年に渡り200万ドルの拠出を保証している。

 オンタリ電力公社はプロジェクトの価値として45,000万ドルに相当するトリチウムを供給し、その見返りとしてITERは全電力を同社より購入する。同提案は又、建設、周辺設備の費用への100億ドルのつなぎ融資を含み、これは日本、欧州連合が返還するものとされている。今年後半に提案されると期待されている日本案は、建設コストへのより多額の支援があるものと見られている。

 プロジェクト建設と20年間の研究開発計画への出資国際協定を取り決める調整活動は来年完了される予定である。欧州連合はカダラシュ近郊の南フランスにサイトを提案すると期待されており、一方、日本は3ヶ所の候補地を検討している;北海道苫小牧、本州北部の六ヶ所、そして東京の北約100Kmに位置する茨城県那珂町である。経済的情勢によりロシアがサイト提案する可能性はないと見られている。

 1998年にアメリカがITERより撤退して以来、アメリカの科学者やITER参加極の間に同国の再参加を促す動きがある。カナダのホスト支持者達は、アメリカの隣国である事がこの助けとなると強調している。彼らは、ディック・チェイニー副大統領を議長とする国家エネルギー政策開発グループにより作成された最新エネルギーレポートの中で、同グループが大統領に水力、核融合を含めた次世代技術を開発するようエネルギー省長官に進言すべきだ、と述べたことを指摘しているが、一方で、運営予算案は大規模研究プロジェクの資金を削減しており、この政策がITERのようなプロジェクトのために変更される模様は今のところない。

 サイトとITERへの参加条件の決定は2003年春と見られる。もし全てが順調に進めば建設は2005年に開始し2013年迄に完了する。

 最近の新聞報道によると、日本の建設候補地は、上記の3箇所から、青森県六ヶ所村と茨城県那珂町の2箇所に、事実上絞られた模様である。また、ITERの日本誘致の是非に関しては、内閣府の総合科学技術会議(議長:小泉首相)で慎重な議論が行われているところであり、来年(平成14年)早々には、何らかの判断が下される見通しである。

(高麗山)