SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.6, Dec. 2001

1.米国超伝導送電ケーブル次期プロジェクト相継いで発表!
 _IGC社、Southwire社、Pirelli社_


 本誌の前号では、デンマークのNKT研究連合による高温超伝導ケーブル送電実験開始とPirelli社共同チームの120 m長超伝導ケーブルプロジェクトの進捗状況を紹介したが、このところ米国で高温超伝導送電ケーブルに関する次期プロジェクトの発表が相継いでいる。即ちIGC社共同チームよる1/4マイル(400 m)長超伝導ケーブルの設置プロジェクト、Southwire社の300 m長超伝導ケーブルの設置プロジェクト及びPirelli社共同チームによる1/2マイル(800 m)長超伝導ケーブルの設置プロジェクトの3計画である(Superconductor Week 誌9月3日号・9月17日号・10月15日号)。いずれも300m以上の長尺ケーブル(因みに現用銅ケーブルの単長は600-800 m)による設置・送電実験計画であり、実用化へ連げようとする意欲的なものである。近年に於ける米国の電力危機を追い風にして、超伝導電力ケーブルも愈々本格的前商用化開発の段階を迎えているようである。

(1)IGC社の400m長超伝導ケーブル設置プロジェクト

 IGC社はこの度、子会社のIGC-Super Power(SP)が1/4マイル(400 m)長超伝導ケーブルをAlbany市(NY州)に設置する20 Mドルの次期プロジェクトを明らかにした。三相の35 kV、1250 A低温絶縁型Bi-2223ケーブルはIGC-SPが製造し、ナイアガラ・モホーク電力会社の送電系統に設置される。ナイアガラ・モホークは、NY州上部区域の150万人住民に電力を供給している。ケーブル設置について、三つの異なるルート案がある。当ケーブルが既存の管路中か、新たに建設する管路中に設置するかはどのルートが選択されるかに依存する。IGC社によれば、新管路への設置になりそうである。ケーブル設置の完成には、約3年を要すると予想されている。建設の詳細は、誰がクライオスタットと冷却システムを製作するか、1/4マイルのケーブルが接続部を含むか否かを含めて、未だ公表されていない。IGC社も三相ケーブルが同軸型になるか並列型にするのかは明らかにしていない。IGC-SPのP.Haldar本部長によれば、これまでのHTSケーブルにたいして大きな進歩がなされると云う。この指摘は、明らかに日欧の実証プロジェクトと現在送電実験中のSouthwire社ケーブル及び来るべきPirelli社共同チームによる設置ケーブルを指している。IGC社社長のG.Epstein氏は、「1/4マイル長ケーブルは今までに設置されたケーブルの長さの四倍であり、他の設置ケーブルより多くの電力を、より小さな損失で送電できるように設計されるだろう。」と語った。Haldar氏によれば、当ケーブルは電力系統に完全に組み込まれた最初のHTSケーブル設置になるだろう。「デンマーク、日本及びデトロイトに於けるプロジェクトは、全て変電所内で行われている。当ケーブルは送電線系統内に置かれるだろう」と云う。当ケーブルは、第一世代のビスマス系線材を用いて製作されるが、IGC-SPは自社試作工場で製造したY系厚膜導体を用いて、10 m長の実験室規模セクションを造る計画である。そのケーブルには、約100長のテープが必要であり、パイロット製造工程のスケールアップに必要なデータを取得する事になろう。IGC-SPは、安価な送電ケーブルの製造にはY系厚膜導体が必要不可欠になると考えている。第二世代ケーブルの電流仕様は、今のところ未だ決まっていない。同プロジェクトに対してNY州知事のG.E.Pataki氏は6 Mドルの助成金を与える事を公表している。次の三年間に発生する残りのプロジェクト費用の大部分は、IGC社が負担する事になっている。また資金獲得の為SPI(超伝導の共同事業化プロジェクト)の申請書をDOEへ提出しているようである。

(2)Southwire社の300 m長超伝導ケーブル設置プロジェクト

 この度Southwire社は、300 m長超伝導ケーブルを製作する為、SPI申請書をDOEへ提出した事を明らかにした。この申請が認可されれば、当ケーブルはAmerican Electric Power(AEP)変電所に設置されよう。AEP社は、世界最大のエネルギー供給者の一つであり、当プロジェクトのパートナーである。当提案は、オークリッジ国立研究所(ORNL)を介してDOEと工業界のパートナー間で平等に分担される未公開の経費を要するものである。Southwire社は、工業的貢献の大部分を供給し、AEP社はより小部分を負担することになろう。

 Southwire社は、デンマークのNordic Superconductor Technologies(NST)社製Bi-2223テープを用いて、当ケーブルを製造する事を提案している。同社は、何故最初のケーブル実証のパートナーであるIGC社から線材を買わないかの理由を聞かれた時、"NST社は当プロジェクトに対して、ビジネスの観点からの最善の選択である"と述べた。Southwire社は、当ケーブルには最低一ケ所の接続部が含まれ、冷却系統はPHPK社によって製作されると語った。3M社は、SPI提案に対するDOEからの要請である厚膜導体の研究を提供する事になっている。Southwire社製品開発技術者のD.Lindsay氏によれば、当ケーブルが3軸型設計を採用するか、ジョージア州キャールトン市のSouthwire社工場で用いられた各相分離型設計を採用するかについては、未だ決定がなされていないと云う。DOEは、近くSPI提案の採用を発表する予定である。

 DOEの同業者レヴユーにおいて、Southwire社は2000年4月、同社キャールトン工場にHTS電力ケーブル(30 m)により送電を始めてから、8500時間以上(9月半ばで9500時間)が経過していると報告した。連続運転の最後の2000時間は、無人で運転され当プロジェクトの所期の目標を達成した。当ケーブルの冷却系統は、1999年11月以来連続運転を続けている。2000年6月と2001年4月とのDCケーブル電流Icの比較により、この期間の劣化は無かった事が確かめられた。

 Southwire社とORNLは、ケーブル設計の改良研究を続けており、次期のより長いケーブル設置に向けてサブシステムを開発し、テストを行うだろう。30 mケーブル設置に加えて、共同研究チームは二本の2.5 mケーブルを繋ぐ低温絶縁接続部を設計した。1250 Aを通電できる様設計された接続ケーブルは、ORNLにて成功裡にテストされ、5秒間6.8 kA及び0.5秒間15 kAの電流パルス通電によっても損傷を受けない事が確認された。上記5 mケーブルに加えて、1.6 m長の3軸型ケーブルが製作された。Southwire社のU.Sinha氏は、「3軸型設計に関する最初のテスト結果は、良好なものであった。現在、6 m長の3軸型ケーブルを製作中であり、6ケ月以内にテストできるだろう」と報告した。「3軸型ケーブルでは、テープコストが大幅に低減するだろう。既存の低温絶縁設計では、3つの導体層と3つのシールド層が必要であり、3軸型設計に比べ2倍の超電導体を要す。常温絶縁設計に対しても、3軸型設計では冷却系統と冷媒に関連するコストが大幅に低減する」とSouthwire社は語っている。

3)Pirelli社の800m長超伝導ケーブル設置プロジェクト

 この度Pirelli社は、LongIslandのLongIsland Power Authority(LIPA)の送電系統で、HTSケーブルの実証試験を行うDOEのSPI計画実施社に選ばれた事を明らかにした。当プロジェクトのパートナーには、ASC社、LIPA、EPRI及び Air Liquideが含まれている。当HTS電力ケーブルプロジェクトは、第3期の前商用化SPI計画であり、その予算は18 Mドルで共同実施社間で分担される。

 当ケーブルシステムは、3本の1/2マイル長同軸型低温絶縁HTSケーブルから構成され、ロングアイランドのEast Shoreham近傍、LIPAの送電線系統へ77 MVAの電力を送電する事になっている。Pirelli社主席技師長のN.Kelley氏は、「当ケーブルは米国で低温試験される最初の送電線系統レベル(>69 kV)のケーブルとなるだろう。もっと低電力のケーブルが実証や技術試験の点で好ましいが、HTSから真の利益を得る為には、送電線レベルの系統を代替しなければならない」と語った。Pirelli社は、来年フランスの電力試験所において225kVで稼動する予定である150フィート長低温絶縁HTSケーブルの製造を既に完了している。そのケーブルは、イタリーのCave工場にて、ASC社製Bi-2223テープを用いて製造される予定である。その設計は、米国全土で使用されている8インチ管路中に設置されている従来ケーブルを代替する為の要件を満たすように行われよう。DOEの新聞発表の記述とは反対に、LIPAプロジェクトは都市区域への設置ではなく、二つの変電所を繋ぐものでもない。

 当プロジェクトは、研究開発と設置ジョイントの製作を含むことになろう。Pirelli社はLIPAプロジェクトで使用されるケーブル分節の長さについて明らかにしていないが、1/2マイル長ケーブルはその全長を達成する為、何本かのケーブル分節を接続したもので構成されると云う。

                         

(DYF)