SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.5, Oct. 2001

14.国際超電導シンポジウム(ISS2001)会議開催さる
―神戸国際会議場で―


 第14回国際超電導シンポジウムISS2001(国際超電導産業技術研究センター:ISTEC主催)は、神戸国際会議場にて9月25日から9月27日まで24ヶ国、約600人が参加して開催された。本会議は、米国同時多発テロ事件の影響から一部米国関係者のキャンセルはあったが、発表件数は口頭152件ポスター239件合計391件と若干の減少に留まり、全体として盛会であった。高温超伝導が発見されてから15年が経過しているが、応用研究の発表が増えており、高温超伝導の本格的実用化が始まっている事を感じさせる会議であった。

 初日の会議は、ISTEC/SRL田中昭二所長の開会挨拶に続いて、2件の特別基調講演と6件の基調講演が行われた。

 特別基調講演では先ず、茅洋一地球環境産業技術研究機構副理事長が地球温暖化対策の長期戦略について講演した。20世紀に入って加速しつつある大気中の炭酸ガス濃度増加と気温上昇は深刻な地球的問題となっており、その対策としてエネルギー利用の効率向上と燃料の脱カーボン化が、緊急課題であると述べた。そして、21世紀のエネルギー及び環境問題に於いて超伝導が果たす役割は大きいと強調した。

 続いて、P.M.Grant博士(EPRI=米国電力研究所)は、米国に於ける超伝導電力応用の現状について報告した。前半は、SPI(超伝導の共同事業化プロジェクト)の現状レビューであり、ご自身も参画しているデイトロイト変電所でのHTSケーブルプロジェクトの進捗状況を報告した。ビデオによるケーブル設置作業の説明は、部外者にも分かりやすく聴衆に反響を呼んだ。送電実験開始は、年末になりそうである。後半は、MgB2の開発状況を紹介し、HTSのDOEコスト目標10ドル/kAmに対して、2.03ドル/kAmに低減出来ると期待を述べた。

 基調講演では最初に、発見者の秋光純教授(青学大)がMgB2の開発状況をレビューした。当研究が急速に進展・拡大し、BCS超電導体としての理解が進む一方、依然としてHc2の方は10数Tに留まりそうである。D.K.Finnemore教授(アイオワ州立大)は、世界で初めてMgB2の線材化に成功したグループのリーダーであるが、主として物性面について報告があり、最後に870-880 ℃での熱処理で結晶粒の微細化(1-2μm)が可能であり、MA/cm2の高Jcが得られたと述べた。S.J.Berkowitz博士(コンダクタス社)は、HTSの無線通信応用について講演し、HTSフィルターの設置台数が実用化基準である1000台に近づきつつあり、「これはHTSの勝利である」と述べた。関秋生リニアー開発本部長(JR東海)は、山梨リニアー実験線の進展状況をレビューし、既に実験車は最高速度552 km/hを達成し、7月末日現在累計165、824 kmを無事故で走破し、十分な信頼性を実証していると述べた。X.Obradors博士(バロセロナ大)は、溶融法によるY系HTSの基本特性と限流器応用について報告し、高性能(10 kA/cm2/2T)のバルク体(100Φ×10t)を作成して、400 kVA級限流器に応用し、3.6 kAから0.43 kAへの限流実験に成功したと述べた。腰塚直己超電導工学研究所副所長(ISTEC/SRL)は、フライホイール式エネルギー貯蔵用HTSベアリングの開発プロジェクトについて進捗状況を報告した。既にYBCOバルク(180Φ)の作成に成功し、10 kWh機の設計も了っており、現在アクテイブ磁気ベアリングを用いた高強度・制振CFRPリング機を開発中であると述べた。

 2-3日目の会議は、物理・化学、バルク/システム応用、線材/システム応用、薄膜・デバイスの各セッションに分かれて討論が行われた。各セッションの参加者に寄稿戴いた各報告を以下に掲載する。閉会に当って田中所長は、次回の会議が2002年11月11日-13日横浜市で開催の予定と明らかにした。

 

(高麗山)

1)物理・化学関連

 Physics & Chemistry 分野の報告をMini Symposiumの内容を中心に述べる。

 今回のMini Symposiumは、午前・午後の2部形式で行われた。午前のNew Materialsの部では、MgB2が中心であった。この物質については、前日の25日のPlenary Talkで、その発見者である秋光(青学大)氏自身によって、総括的なReviewがなされた。今年の1月に発表されて以来、猛烈なスピードで研究が進み、氏自身が "I am not a top runner" と何度も繰り返されたのは印象的であった。もっとも、氏にとってはより転移温度の高い未知の(未発表の?)物質に関心が移っているのかも知れない。MgB2の基礎物性のほとんどは強結合のBCS理論で理解でき、元素置換効果・周辺物質にも特筆すべきものがない。その意味で銅酸化物に見られるような広がりがなく、今後はトンネル分光などで見られる「2つのギャップ構造」の真偽が残された問題であろう。もうひとつの新物質C60については、岩佐氏(東北大)がその超伝導特性について解説した。それによれば、バルクのC60の超伝導とFET構造で現れる超伝導は、さまざまな点で定性的に異なっている。そして講演の最後に、Bell研のSchonらがFET構造をもつ銅酸化物絶縁体で、電子注入で30 K、ホール注入で87 Kの超伝導を見出したという口コミ情報を紹介し、聴衆に衝撃を与えた。

 午後のMini Symposiumは Electronic State Revealed by Different Energy Scale Probes というタイトルで、高分解能化した分光法によって明らかになった高温超伝導体の物性が総合的に論じられた。ただ、9月11日の同時多発テロの影響で、アメリカからの招待講演者であるCampuzano氏とBasov氏が来日できなかったことが残念であった。芝内氏(京大)は、60 Tの超強磁場下でBi-2212系のc軸方向の抵抗率を測定し、強い磁場によって擬ギャップが抑制されること、またその抑制のされかたは、Andersonの予言したスピンー電荷分離シナリオと符合することを見出した。他方、高木氏(東大)はNaを置換したCa2CuO2Cl2 の角度分解光電子分光によって、この系のアンダードープ領域に擬ギャップが存在し、それは反強磁性絶縁体のギャップの名残であると述べた。柳瀬氏(東大)は理論の立場から、擬ギャップは強結合超伝導体に見られる強い超伝導ゆらぎが輸送現象などの物理量に反映されたものであると述べた。これらのどの考え方が現実の高温超伝導体の擬ギャップに当てはまるのかはまだわからない。あるいは、いくつかの実験で指摘されているように、擬ギャップにはいくつかの種類があり、ドープ量・温度・測定法によって異なるのかも知れない。

 高温超伝導の発見から15年、基礎研究コミュニティが蓄えた測定ノウハウ・経験は膨大であり、「有事」の際には瞬時に一通りの実験が行えるようになった。MgB2はその好例で、発見からわずか半年余りで基本的な物理は決まりつつある。それに比して、高温超伝導体の物性は複雑で奥深い。ほとんどすべての物理量が高精度で測定されているにもかかわらず、超伝導機構解明にはまだ多くの議論が必要である。(変な言い方だが)定量的にはわかったが、定性的にはわかっていない状態なのだ。FET構造を用いた研究がその突破口となるのであろうか。今後の研究に期待したい。

        

(早稲田大学:寺崎一郎)

2)バルク関連

 バルク材料セッションでは、19件の口答発表と、40件のポスター発表があったが、紙面の都合があるので、口答発表を中心に記者の主観で主なものを報告する。

 Sawamura (新日鐵)は、MUlti-Seeding seamLEss (MUSLE)法と名づけた123系溶融バルク体の新たなmulti-seeding法を報告した。これは包晶温度の差を利用しており、具体的にはDy系の層の上に、包晶温度がより高いDy0.75Gd0.25系の層を重ねた前駆体を作成し、4つの種結晶を置いて溶融成長により直径46 mmの試料を得た。表面層は4つのドメインに分かれたが、下側の層は全体が1つのドメインとなった。これは、上層を切り離して測定した下層側の捕捉磁場分布が、単一ピークであることで確認された。Iida (SRL)はYBCOバルク体を、包晶温度の低い系で融着する手法を報告した。(100)面同士の融着界面には組成ずれが観測され、(100)/(110)界面にも同様に不純物がたまるが、(110)同士では組成ずれのない良好な界面が得られた。さらに、3枚のバルク試料を並べて、2つの界面をそれぞれEr系とYb系で融着した場合の捕捉磁場分布は、Er系で融着した界面では連続しており、この界面が強結合であると確認された。なお、Yb系での融着界面には磁束密度の谷が観測されたが、焼成条件の最適化によりYb系でも強結合界面が得られると考えているようである。

 Muralidhar (SRL)は希土類元素を3種類含む系に、Gd211を添加した場合の特性を述べた。中でもNd、 Sm、 Gdの3元系で直径30 mmの単一ドメイン試料の成長に成功し、捕捉磁場が1.2 Tに達したと報告された。さらに、印加磁場2 Tで試料中心に3.5 Tの磁束密度が観測されたが、外場との差(1.5 T)はゼロ磁場での捕捉磁場を上回っており、Jcのピーク効果に対応している。Nariki (SRL)は、焼成条件の検討やボールミル法の利用により211相の平均粒径を小さくして溶融成長したGd系のJcが上昇すること、ただし、平均粒径が0.07 μmの211相を原料にした試料は多核成長したこと、平均粒径が0.2 μmの場合には単一ドメイン試料が得られたことなどを報告した。さらに、直径50 mm、厚み12 mmの試料表面で2。6 Tの捕捉磁場が得られ、厚みを30 mmに増加させたところ、2.7 Tに上昇したことなどを報告した。Krabbes (IFW Dresden)は、YBCOへのZnの微量添加について述べた。2個の試料間の捕捉磁場を測定したところ、Znのみを添加した試料は11 T程度で割れたが、Agも添加した試料は彼らの超伝導マグネットの最大磁場を印加して16 Tの磁場を捕捉しても割れなかった。ただし、磁場を捕捉したまま昇温させる途中で割れてしまい、これはフラックスジャンプのためであると述べた。

 Wang (Southwest Jiaotong Univ.)は、15.5 mの永久磁石の軌道上に初めて有人の溶融バルク超伝導体を用いた車両を走らせたことを報告した。最大5人を載せ (車両込み重量535 kg)、また、中国の要人も多数試乗した様子が多くの写真を織り交ぜて紹介され、なかなかに楽しい講演であった。より小型の応用として、Teshima (新日鐵)は電流リードに関する報告を行った。冷凍機冷却超伝導マグネットの小型化により電流リードがマグネット本体に近づくと磁場にさらされるため、磁場下のJcがBi系より優れている123系が有利である、との観点から研究が行われた。直系46 mmのQMG試料から切り出した電流リードのIcは、77 K自己磁場中で測定限界の800 Aを超え、0.3 Tの印加磁場下では500 Aであった。電極の接触抵抗は77 Kで1.6μΩ、4.2 Kと77 Kの間の熱リークは電流リード一本当たり0.095 Wであった。

(名古屋大学:生田博志)

3)Y系線材関連

 Y系線材では、全部で34件の発表がなされた。内訳は、ゾルゲル法9件、LPE法8件、EB法4件、PLD法1件、バッファ層、超電導層に関して8件、Jcとピンニング関係で4件である。特に、最近SRLから活発に進展具合が報告されるゾルゲル法の件数が増えたのが、今回の特徴である。

 9月11日の米国での事件の影響でいくつかキャンセルがあったが、代わりに、EPRIのGrant氏がしゃべるなど、米国チームの連携のよさと会議主催者への配慮が見られた。筆者が聴講した講演の中からいくつか目立った成果を紹介したい。

 ANLのBalachandran(EPRIのGrant氏発表)は、配向していないAg基板上にISD法によりYBCOをつけ、Jc=20万A/cm2(77 K、0 T以下同じ)を得た。基板に配向したものがいらなければ、生産効率もあがり有望である。同様に東芝のYoshinoらもAg基板上にYBCOを作り、同レベルのJcを得ている。こちらは、Agの上に直接YBCOがある、簡単な2層構造である。実用段階では、液体窒素温度で数100-1000Aの電流を流すので、最終的にAgなどの安定化層が数10-100 μmは必要になるので、もう少しJcが上がれば、最終工業製品としての効率性から見ると、他の製法をしのぐ可能性が高い。

 ゾルゲル法では、産総研のManabeから、新しいフッ素入りの溶液を使う方法が報告された。ピリジンを入れた溶液で、中性であるために多層塗りによる厚膜ができる、また、仮焼が従来のTFA法では24時間かかるが、10分程度でOKとのこと。Jcはまだ誘導法だけでしか計っていないとの事であるが、通電法によるJcの結果が待たれる。TFA法に関しては、SRLのYamada(Yutaka)から最近のSRLの進展具合の総合報告、SRLのFujiから難しいといわれていたTFA法での厚膜化、昭和電線のTakahashiによる連続化を目指したビードコート法による結果の紹介があった。いずれも高いJcが報告されているが、まだ、長さが10 cm程度らしいので、早期長尺化が待たれる。同時にYBCOの形成速度が1 A/secと遅いので、高速成膜への技術改善も必要であろう。

 他方、フッ素を含む系ではBNLのSuenagaから新しい方法の提案があった。硝酸塩熱分解法で数μmの厚膜を作り、その後、別過程でフッ素を染み込ませ、最後に水蒸気中熱処理で超電導層を得る方法である。非真空プロセスで簡単に厚膜を得ることができるので、非常に有望かと思える。現在、Jcは1MA/cm2に少し足りない位とのこと。日本からもこうした新しいプロセスの提案が待たれるところである。

 PLD法は、米国、欧州、日本とも最も進んでいる製法である。フジクラのKakimotoからは、10 mの線材の発表があった。IBADだけでは、60 mもできており、これが現在世界の最高値である。あとは、生産性などをあげることが必要になろう。住電のTanedaからは、新しいISD法の発表があった。2段ISDとでも言うべき手法で、2回逆方向から中間層をつける。これにより、配向度が向上する。京大のMatsumotoからは、SOEに新たにBaSnO3中間層をつけることで、Jcが高くなるとの発表があった。この新しいキャップ層の効果で1 MA/cm2近いJcが得られている。NiO層でのグルーブによるJc低下の問題が解消される可能性がでてきた。

 LPE法は厚膜ができることで有名であるが、今回、SRLのYamada(Yasuji)から初めて高いJcが報告された。IBAD-YBCOの種膜上に、従来より低温でLPE成長させ、1-2 MA/cm2のJcを得ている。従来は930 ℃でLPE成長を行なっていたが、基板との反応が激しく、電流は流れていなかった。今回、雰囲気のガス圧を下げて、820 ℃程度へ温度を下げて成膜したところ、良好なYBCOが得られた。しかも、種膜の配向度より、LPE-YBCOは良くなっている。現状では、厚さは1μm程度であるが、温度低下による成長速度の減少を改善すれば、さらに有望な手法となろう。

 今回、Bi系では、日立から長さ3.5 kmの線材が発表された。また、いくつかのBi線による機器応用プロジェクトもなされた。酸化物線材の工業化への課題も、担当者レベルでは、明確であろう。Y系が、使用温度、Jcなどでは優位であるが、Y系研究者とBi系研究者との間で、酸化物線材の工業化への真の問題点(コスト?)を議論することが、今後、重要であろう。

 

(超電導工学研究所名古屋研:山田 穣)

4)エレクトロニックス関連

 超電導デバイス製作技術については、最近発見された新しい金属系超電導体であるMgB2でDC-SQUIDを製作して接合電圧の磁界依存性(いわゆるSQUID磁界変調特性20 K動作)を測定したというオランダの測定データが韓国の研究者から紹介された。MgB2の薄膜を加工してWeaklink型ジョセフソン接合を製作し、DC-SQUIDを構成したものである。Nb接合と同様の磁界変調特性が得られており、この特性を見るかぎりでは、SQUIDなどの単体デバイスとしては、このMgB2接合もNb接合と同じ様に使えそうである。ただし超電導集積回路用のデバイスとしては、多数の接合のチップ内特性ばらつき(いわゆるσ値)やrun-to-runでの特性再現性が非常に重要となるので、やはりNb接合のように、接合品質に優れ、ばらつきが少ないトンネル形接合の出現が待たれる。このばあいNb接合のAlOxバリヤのような、MgB2に適したトンネルバリヤを見つけることが非常に重要であるが、今回はそのようなMgB2のトンネル接合化に向けたバリヤ材料(あるいはトンネル層形成法)の探索に関する発表は見られなかった。

 高温超電導マイクロ波フィルタに関しては、Plenary LectureでConductusのDr.Berkowitzが米国での現状を報告したが、米国では高温超電導フィルタシステムが移動体通信基地局ですでに1000台が商用に供されていること、これにより基地局感度が向上し、不感地帯の解消に役立っていることが報告された。現在の課題はコストダウンの一言につきるとのこと。この事情は日本でも同じで、会場のフィルタ研究者も異口同音に超電導フィルタが日本でも商用化されるためには冷凍機も含めたコスト面で他のシステムに勝たなければならないと言っていた。またDu Pontが新しくタワートップ型のコンパクトな超電導フィルタシステムを発表した。今まで高温超電導薄膜の供給のみを手がけていた巨大企業のDupontがついに冷却実装も含めたフィルタシステム分野への参入に踏み切った意義は大きいと思われる。

 高温超電導接合製作技術に関しては、ランプエッジ接合の特性ばらつきの改善について、ここ数年来、各機関の努力により順調にばらつきが低減されてきたが、この1〜2年は、ばらつき低減の進捗が飽和気味であり、1σ=5 %以下にするのはなかなか難しそうであるとの現状報告(東芝 吉田氏)があった。この壁を突破すべく、さまざまな研究、たとえばランプエッジ面の平坦性の改善や下部電極の品質向上などの努力が報告されていたが、まだこの壁を破るためのキーテクノロジーの手がかりはつかめていないようである。

 SQUID応用に関しては、医療応用(心磁計など)や非破壊検査など、すでに高温超電導SQUIDの実用化が始まりつつあるため、より使い易くするための研究の発表がめだった。たとえば磁気シールドなしで使うための差動形SQUIDの特性改善(ドイツ)や、心磁図のデータからノイズを除去するためのフィルタを含めた可搬型SQUIDシステム(阪大、住友電工)などの報告があった。また磁界検出用SQUIDのピックアップコイルへの磁界トラップを防止するために設けるFlux-damの代わりに2つのジョセフソン接合からなるSQUID形のスイッチを設け、外部磁界によるランダムノイズを短時間で除去する方法の提案があった(九州大)。

 デジタル応用については、Nb接合集積回路では、超電導ルータ用の2x2スイッチ(約2400接合 NEC)の動作確認(低速のみ)や、ADコンバータプロトタイプ(1次モジュレータ+1次デシメーションフィルタ 約250接合)の接続動作によるノイズシェーピングの測定(800 MHzサンプリング  超電導工研)や、組込型テスト回路による半加算器の測定(14 GHz 名古屋大)などが発表された。また米国のペタフロップスコンピュータ関連では、SFQ回路のマイクロプロセッサ・プロトタイプFLUX-chipの研究の進捗状況(とくにTRWで試作されたチップのSUNYでの測定結果)が注目されていたが、試作チップがTRWから届いたばかりで現在測定中とのことであった。今回の発表(SUNY Dr.Dorojevets)は、測定結果の報告はなく、プロセッサの回路構成の説明(6月のISEC01大阪ですでに得られていた情報)のみであった。

 また高温超電導回路では、ADコンバータ用モジュレータの動作測定(平均電圧法 100 GHz 日立)、ジョセフソン波形サンプラーの測定波形ひずみ改善(5.9 Gbps波形 NEC)などが報告された。また新しいデバイスの試みとしてYBCO(d-wave超電導)とNb(s-wave超電導)を電極としてジョセフソン接合を形成したπ接合(バイアス電流ゼロで位相差π/2)でSQUIDを構成し、SFQ論理回路のインバータ機能を実現して、半導体C-MOSのような相補形SFQ回路を形成するという提案と基礎的な測定結果が報告された。

(超電導工学研究所:宮原一紀)