SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.4, Aug. 2001

9.Atlantic Tech.社が超伝導エレクトロニクスの新開発会社を設立!


 Atlantic Technology社は、新技術分野へ積極的に投資を続けている米国のベンチャー企業として知られている。本誌でも昨年の8月号(Vol.9, No.4)で、Atlantic社が次世代高速光ケーブル通信技術を開発中のTera Comm社に出資し、最大の出資者になったと云う記事を取り上げた。引き続いて12月号(Vol.9, No.6)では、Tera Comm社が高温超伝導体の超高速スイッチング現象を利用した光変調方式の基本特許を取得し、本超伝導光変調器を実証するプロジェクトを推進している事を紹介してきた。さらに最近、光通信分野への開発投資の一環として、新開発会社の設立が報じられている。

 Superconductor Week 誌6月18日号(Vol.15, No.9)によれば、Atlantic Technology社は超伝導エレクトロニクスへの投資を拡張しつつあるが、この度全額出資の新開発会社としてCryocomm Inc.を設立した事が明らかになった。この投資を受けてCryocomm社は、Terabitのパケット・スイッチング及び光ファイバー通信応用向けの先進超伝導技術を開発する計画である。Cryocomm社の事業立ち上げチームを引張っているAtlantic社副社長のW.Glomb氏によると、最近Cryocomm社は産業界、政府及び学会専門家を集めて、科学諮問会議の設置を図っている。「過去2?3ケ月話し合ってきたが、超伝導ビジネス界にはそれほど多くの人々はいない」とGlomb氏は語っている。

 Atlantic社は、新技術の孵化器の役割を果たすベンチャー企業であり、新しい発明が技術開発の初期段階を切抜けるのを支援している。「優れた研究開発部門を多く持っている大企業は、既存製品を改良する事や臨床試験に至るまで開発し、市場に出す事が上手である。しかし彼等は、技術的発見や発明をタイムリー且つ低コストで達成するのは下手である」とGlomb氏は付け加えた。Atlantic社の基盤は製薬工業にあるが、そこでは商業化のため他の投資家に持ち込む前に、初期開発期間を通じて資金援助するのが共通のビジネスモデルになっている。Atlantic社は、このモデルを物理科学、エレクトロニクス及び通信工業へ適用しようとしており、先ずCryocommから始めつつある。

 上記科学諮問会議のメンバーは、2?3ケ月中に発表される事になっている。当会議は、光ファイバーネットワークを用いて160 Gb/sの伝送速度が可能な超伝導・光式ルーターと共にデータを発・受信する技術を完成するために必要な新技術を特定するのを助けるだろう。Glomb氏は、「我々は、超高速スイッチング及び変調を実行するのに、超伝導エレクトロニクスは非常に大きな可能性を持っていると見ている。光ファイバーネットワークは今や、1本のグラスファイバーでTb/sのデータ伝送が可能な水準に到達している。しかも当速度は、毎年倍増している。もしMoore則が引続き成立するならば、我々は半導体システムが実現可能な速度を凌駕する事になろう。」と語った。高速の機器を開発するためには、受信器や発信器だけでなくデジタル論理回路やスイッチング技術への投資が必要である。Cryocomm社の目標は、データ処理の全段階に亘る超伝導による解決策に投資し、商用化に向け完全な実施案を結集する事である。

 同社は、既に約2Mドルを投資しており、本技術が実現可能である事を実証するために、更に数倍の追加投資を期待している。量産が可能であり、十分検証されネットワークへの設置の準備が整っている製品の商用化には、100Mドル台のコストが掛かると予想されている。Atlantic社は、製品開発のこの段階では資金注入は行なわないが、一旦本技術が実証されれば他の投資家に持ち込んで、前記規模の稼動ができるよう資金援助を要請する予定である。光通信機器に対する潜在市場は、通信工業が光ファイバーネットワークへ向けて移行するにつれて、劇的に増大することが期待される。遠隔通信サービスを提供するプロバイダーが得た2000年度の全収入は、9000億ドルに上り、年率10%の割合で増加を続けている。長距離光ファイバー設備に関する資本支出には、114億ドルの長距離光ファイバーケーブル系統と22億ドルの中核スイッチ及びルーター機器が含まれている。これらの支出も各々年率30%と100%の割合で増加を続けているという。

                                     

(高麗山)