SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.4, Aug. 2001

6.SFQ(単一磁束量子)回路セルベース設計手法を確立
 2400接合のスイッチ回路を設計
 _NEC基礎研究所_


 NEC基礎研究所は、セルベースによるSFQ(単一磁束量子)回路の設計手法を確立した。更に、その手法を用いて2400接合のスイッチ回路を設計した。

 超伝導ディジタル回路の回路方式として近年多く用いられるのは、SFQを情報の担体とする回路である。今後の処理すべき情報量の増加に伴い、その処理を高速動作可能なSFQ回路で行うことが非常に有効であると考えられている。 NEC基礎研究所では、ディジタル回路応用として、大容量ハイエンドルータの開発を進めている。中でも、高速なデータ交換を行うスイッチをSFQ回路で構成することによりボトルネックの解消を狙っている。

 SFQ回路の大規模化へ向けて、要素回路を「セル」として予め用意し、それらの接続で論理回路を構築するセルベース設計手法を確立した。セルは40マイクロメートルを単位長とする正方形または長方形にレイアウトされ、セルをタイル状に並べるだけで、隣接セル間の入出力接続を保証できる。セルベース設計のルールに沿って、既に約100セルが設計され、セルライブラリとして管理されている。

 セルベースによるSFQ回路設計を支援するためにCAD(Computer Aided Design)ツールの開発を同時に進めている。開発したCADツールには、高速なSFQ回路特有のタイミング設計を行うために、新規に開発した遅延解析プログラムが組み込まれている。セルベース設計手法とそれを支援するCADツールにより、2入力2出力のスイッチの設計・レイアウトを行った。このスイッチは、アドレスの解読と衝突の検出を行う機能を持っており、衝突が起きないように自律的に経路を決定できる。図1はそのチップ写真である。回路の大きさは縦1.5ミリメートル、横2ミリメートルである。回路は約2400のジョセフソン接合で構成される。ディジタルシミュレーションにより、配線遅延も考慮して正しく動作することを確認している。

 回路設計とツール開発を担当する亀田義男研究員は「大規模な回路設計には階層的な設計手法が不可欠である。SFQ回路向けに新たに開発した設計支援ツールにより効率的な設計ができた。」と述べている。また、同じく開発に携わる萬伸一主任研究員は「標準的なセルライブラリ・設計ツールとして公開してゆきたい。また、多くの研究機関の協力を得て、セルやツールの拡充を進めたい」と話している。

        

(輪)