SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.3, Jun. 2001

7.アクテイブシールド(打ち消し型)付き800 MHzNMR磁石を開発!
_ブルーカー社_


 Superconductor Week 誌4月23日号(Vol.15, No.4)によれば、Bruker Instruments社はこの度、高解像度NMR研究向けに、世界初の打ち消し型シールド付き800 MHzNMRマグネットの開発に成功したことを明らかにした。当800 MHzNMR磁石は、2 Kで動作するブルーカー社の革新的マグネット技術(過冷却システム用超安定化技術及び洩れ磁界を低減させる超遮蔽技術)を組み込んだもの。ブルーカー社常務であり且つ800US2?設計チームのリーダーでもあるG.Roth博士は、『この800US2?は、最適の磁場均一度、磁場安定度及び極低温性能を実現出来るだけでなく、加えて超シールド技術のメリットである小さな洩れ磁界と外部磁場変動に対する良好な遮蔽効果をも提供出来る』と語った。800US2の第1号機は、'99年10月以来ブルーカー社の実証実験所でテストを続行中である。最近は、約半ダースのNMR機の注文をうけており、現在製作中である。

 高磁場マグネットを遮蔽することは、5ガウス区域への一般人立ち入り規制(ペースメーカー保持者の安全対策)と諸機器間の干渉を防止する要請の上からも有利である。非遮蔽型800MHzマグネットの5ガウスラインが中心から20フィートであるのに対して、本マグネットでは9フィートに縮小し、5ガウスラインで囲まれる体積は非遮蔽型の10%に減少する。ブルーカー社社長のF.Laukien博士は、『顧客にとっては、このように小さな洩れ磁界は、本機を現場に設置するコストの大幅な低減が可能になるか、または以前には不適格であった800 MHzNMR機の設置を初めて可能とするものである。実際、この新型800US2マグネットでは、従来の非遮蔽型500MHzマグネットよりも狭い占有面積になる』と語った。1台の非遮蔽型マグネットを設置するのに要する面積に、打ち消し型遮蔽技術により4台の800 MHzマグネットを設置出来る、とブルーカー社は云っている。

 超高磁場NMRは、主として薬学的研究と蛋白質構造決定用の有力な道具であり、遺伝子工学及び蛋白質学における最近の進歩により測定機器に対する非常に高い関心が産み出されている。大きな研究大学や国立研究所及び製薬会社が主要なユーザーであり、彼等はしばしば沢山のNMR機器を必要としている。ブルーカー社によれば、沢山のNMR機を用いる設置に対しては、削減された空間要求はシールドの追加的コスト(40万ドル)を容易に正当化出来ると云う。本システムは、コイルの外層部分を逆極性に巻線することにより遮蔽される。本構成は、洩れ磁界をも低減させるが、内部の磁場強度を減少させるので、800 MHzを達成するためには内層部分により多く巻線することが必要である。実際、当マグネットは900 MHzマグネットと同じクライオスタットに収納される。営業部NMR部長のM.Chaykovsky氏は、「アクテイブシールド(打ち消し型)技術は、高磁場NMR応用には必須である。何故なら、パッシブシールド(鉄ヨーク型)では十分な均一度が得れないからである。このような種類の機器への応用では、0.5 Hz程度の磁場均一度が必要である。そのような均一度は、振動に因る変動あるいは熱膨張が実験結果に影響を与えるパッシブシールドに依っては得られない。」とコメントしている。

(こゆるぎ)