SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.3, Jun. 2001

17.第5回超伝導科学技術賞の授与式挙行


 去る5月24日、青山学院大学において社団法人未踏科学技術協会超伝導科学技術研究会主催の第27回シンポジウム「21世紀の超伝導」が開かれ、この席上下記の方々が第5回超伝導科学技術賞を受賞した。この賞は超伝導科学技術の基礎から応用、用途開発までの広い分野の中から優れた成果や貢献に贈られるもので、本年は「科学技術賞」として7件、「特別賞」として1件が選定された。

第5回超伝導科学技術賞

【特別賞】中島 洋

「山梨浮上式鉄道実験センターにおける時速550キロメートル走行」
 浮上式鉄道技術開発本部長として超伝導磁気浮上鉄道実現の準備となる山梨浮上式鉄道実験線用車両の開発と時速550キロメートル走行の実証を含む実用化要件を確立した。特に、超伝導磁石と車載冷凍システムの開発、冷凍基地の設計及び乗客大量輸送の可能性を実証した。

【科学技術賞】

@ 松田祐司

「高温超伝導体のジョセフソンプラズマ共鳴の研究」
 高温超伝導体の固有ジョセフソン接合において特異的に生じる鋭いプラズモン励起による共鳴現象を見出し、ジョセフソンプラズマという新たな概念を構築した。また、精緻な実験の考案により、従来型超伝導におけるジョセフソン効果とは異なる高温超伝導特有の現象としてジョセフソンプラズマの概念を確立し、超伝導現象論における新たな分野を開拓した。更にこの共鳴現象を用いて渦糸状態の研究を行い渦糸相の相転移を解明した。

A 山下 努、金相宰(Kim Sang-Jae)、Iouri Latychev

「単一クーパー対素子の提唱と実証」
 これまで観測されたことのない、超伝導ジョセフソン接合を用いた単電子トンネル現象を提唱し、実験的に観測した。理論的推察による予言と精緻に工夫された実験による実証は、世界に先駆けて単一クーパー対素子の分野を開くものであり、超伝導の基礎およびエレクトロニクス分野に多大なインパクトを及ぼすものである。

B 山田 穣、芳野久士、村瀬 暁

「先進超伝導線材の開発、特に銀シース法の開発」
 ビスマス高温超伝導体、Nb3Snなどの先進超伝導材料の線材化についての多大の貢献。特に、鉛添加ビスマス超伝導体、銀シース法及びチューブ法線材の開発に初めて成功した功績は極めて大きい。銀シース法ビスマス高温超伝導線材はその後の高温超伝導応用の進展を加速させ、また、チューブ法Nb3Sn線は高い臨界電流密度を達成し、多くの高磁界マグネットに使われていることは高く評価できる。

C 本島 修、佐藤 隆、三戸利行、今川信作

「定常核融合実験装置(大型ヘリカル装置)の超伝導マグネットシステムの研究開発」
 大型ヘリカル装置(LHD)は、磁場封じ込めのための全てのコイルを超伝導化した世界初のヘリカル型プラズマ実験装置で、平成2年度からの8年計画で建設を完了し、平成10年春からプラズマ実験に用いられている。装置本体の外径は 13.5m、ドーナツ状プラズマの直径及び太さは、それぞれ約8mと1.0〜1.2m、プラズマ中心磁場は第T期で 3T、第U期で 4T であり、装置の総重量は 1,500 ton に達する。本装置の設計、製作における研究成果は、超伝導大型応用における重要なマイルストーンとなり、国際的に高い評価を受けた。

D 船木和夫、岩熊成卓、能瀬眞一、堤 克哉

「系統連携できる高温超伝導変圧器の開発」
 高温超伝導体による交流仕様の線材・巻線の構成法や変圧器への応用のための要素技術の開発研究を行い、実系統への導入を前提とした高温超伝導変圧器を開発した。単体試験により超伝導を利用した設備として通常の変圧器規格に準拠した性能をもつことを示し、更に、冷媒の自動供給装置を開発して付加することにより実系統と接続した長期実証試験に成功した。

E 佐保典英、水守隆司、西嶋規世

「超伝導磁気分離システムの開発と実証」
 水質汚染物質の回収浄化、稀少資源の回収等、対象に応じた超伝導磁気分離システムの開発を継続的に進め、省エネルギー、高速、高除去率分離技術を開発し、その有効性を実証してきた。特に、高温超伝導バルク体保持磁界特性を有効に利用した膜磁気分離システムを開発し、新たな応用技術を実証、応用分野を明示した功績は極めて大きい。

F 浅田雄司

「新超伝導材料の数値データベースの構築とWEB公開」
新超伝導材料の物理特性を文献から抽出し、データベース化してインターネット上に公開した。単に特性値の比較が出来るだけでなく、その温度特性なども比較できるように工夫されている。代表的な酸化物超伝導材料についてWGを組織してデータを収録し、データベースとして公開した。測定条件等も含むため、データの標準化に寄与する。超伝導専門家による膨大なデータの収集とそのデータベース化の意義は計りしれない。

 本賞が超伝導の分野で日々奮闘されている上記の方々を勇気づけ、今後なお一層の活躍に資することを期待したい。