SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.3, Jun. 2001

1.高温超電導ケーブル 課電・通電試験始まる
―銅線ケーブルの100倍の電流密度―


 東京電力、住友電気工業、電力中央研究所の3者は高温超電導ケーブルシステムの課電・通電試験を6月11日、電力中央研究所・横須賀研究所で開始した。

 内径15 cmの管路に3相66 kV・1000 A 3心一括高温超電導ケーブルを組み込んだシステムで、長さは100 mと世界最長。従来の常伝導ケーブルに比べ電流密度を約100倍に高め、送電ロスを大幅に低減し、コンパクト化できることから、既存の地中管路を有効利用できるなど建設費の大幅なコストダウンが期待される。

 今後1年間かけて超電導線材の特性変化や電流変動に対する冷却系の運転特性などを評価し、検証する計画である。

 高温超電導ケーブルは大規模超電導応用の本命とも言えるもので、米国ではDOEとデトロイトエジソン社、米国EPRI(電力研究所)の共同するデトロイト市再開発プロジェクトの一環としての都心変電所構内のケーブルとしての実系統130 mケーブル試験開始が予定されており、さらに、デンマークNKT社のNST部門(Nordic Superconductor Technology)作製による30 m級ケーブルでの試験が6月初旬に始まったことが報道されている。

 しかしながら、今回の東電-住電-電中研共同プロジェクトによるケーブルは、さらに一歩先を行っている。その理由は、現在、ケーブルの最大の課題は交流ロスや侵入熱であるが、この問題への対策がなされているのはこの日本勢のケーブルだけである。例えば、3本の超電導電流導体の各々からの洩れ磁場による相互作用を防ぐために、各々の導体には外側からそれぞれ超電導磁気シールドが施されている。これにより、三芯一括で約2 W?m(@1kA)の交流損に抑えられており、冷却に要するエネルギーまで考えても銅線ケーブルに比較して約2倍の省エネルギー効果が得られる。これに対して、海外勢のケーブルではまだ交流損と侵入熱に対する対策を行うまでに至っておらず、その意味では冷却に必要な電力まで考慮すると、省エネルギーは達成できていない。

 6月11日の試験開始式は60名余の関連者が集まって行われたが、東京電力種市健副社長は「この試験の開始を待ちわびていた。超電導技術は世界各国で開発競争が進んでいるが、私たちが世界の最先端と自負している。是非、実用化の先鞭をつけていただきたい。」と語っている。また、住友電工倉内憲孝会長は「超電導技術開発のエポックメーキングな出来事」と語った。

 高温超電導ケーブルは当面地下管路送電ケーブルの容量増強用として注目されており、5km毎に設置される冷凍機から液体窒素を内径15cmのケーブル管内に通じる必要があるが、冷却に必要な電力は5kmあたり現在の冷凍技術で約200kWと試算され、銅線ケーブルの抵抗損の半分程度ですむ性能であり、設置コストだけでなく、省エネルギーにも役立つ。当面、最大のメリットは地下の管路および洞道を拡大・増設することなく送電容量を増強できるための建設費の低下とされる。

 高温超電導ケーブルの未来構想については、自然エネルギー時代を可能にするものとして、超電導グローバル電力ネットワーク構想なども発表されている。

 今後、本誌では随時この試験に関するニュースを追っていく予定である。

(HTS Watcher)