SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.2, Apr. 2001

2. カリフォルニア電力危機はインターネットと関連
_超電導工学研究所田中所長が講演_


 昨年夏以来、サンフランシスコ、シリコンバレーなど米国カリフォルニア州では電力供給力不足が顕在化し、今年1月18日には実際に停電の事態を迎え、信号機も使えずに交通が麻痺するといった大問題となっている。同州では環境派も折れて、急遽、数箇所の火力発電所建設を企図しているが、発電所建設には時間がかかるため、この電力危機は3年以上も続きそうだとの見方がでている。

 超電導工学研究所田中昭二所長は、最近いくつかの講演の中でカリフォルニアの電力危機に触れ、今年の夏が暑ければ、今度はニューヨーク大停電が危惧されるという予測を示している。同氏はこれがインターネット普及と深い関連があるとの分析にたち、国際超電導産業技術研究センター(ISTEC)が中心となり検討委員会を設立して報告書を作成してきているが、その第2回報告書はこの3月一杯で完成予定という。

 同氏によれば、カリフォルニア電力危機は、よく言われているように電力事業規制緩和による供給計画の無責任な空白の発生も一因ではあるが、その主要な原因は2年前から生じている急速な電力需要増大にあるとする。例えば1999年のカリフォルニア州の電力消費は14%(対前年度比)も増えている。

 田中氏はかねがね情報化社会は必ずしも省エネ社会ではないと警告していた。定量的予測は1999年5月にGreening Earth SocietyアドバイザーのM.P. Millisによりインターネットが電力消費に与える影響についての報告書が出され、雑誌Forbes Global, May 31,(1999)にP. Huberにより紹介された(本誌8(3)p.6(1999)に紹介)のが最初と思われる。これによると10年程度のうちに全米電力消費の50%に達することが予測されていた(平均的インターネットユーザーが週に12時間パソコンをインターネット接続すると仮定)。

 田中氏は今回の電力危機は、したがって、カリフォルニアだけに止まるものではないとする。米国に較べ、ほぼ5年遅れで情報化が進行中の日本では、紀元2005年前後に電力需要増大が顕著になるとの予測ということになる。

 同氏は、今後の電力危機回避において、まず、都市中心のオフィス街が情報化することによる電力増大に対処して地下埋設送電の増強が必要となることを予言し、また、省エネが徹底して進められなければならないことを主張している。さらに、情報ネットワークにおけるサーバー・レベルでの電力消費が最も大きいことから、将来的な高度情報化ネットワークに向けた省電力型超伝導素子(SFQ)開発の必要性を訴えている。SFQ素子はスイッチング速度において現在の半導体素子の100倍、一方、消費電力において1000分の1が実証され、また、高度集積化が可能という実績が、昨年、NECなどの研究開発陣などによって示されたとしている。

           

(PKO)