SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.2, Apr. 2001

14. 移動体通信基地局用新型フィルターの開発進む
_Conductus社, ISC社_


 ここ数年、高温超伝導体(HTS)を用いた移動体通信基地局用フィルターの進展には目覚ましいものがある。HTSフィルターが初めて登場したのは95年である。これは、所謂第1世代(1G)のアナログ方式のもので、高感度によるカバー率向上など或る程度の効果はすぐに実証された。ついで第2世代(2G)のデジタル方式へ転換するに従って、CDMA(符合分割多重通信)、TDMA(時間分割多重通信)など多数の周波数バンドで運用される為、各電波間の干渉問題が生じ、これを解決できる高性能フィルターのメリットは大幅に増大した。現地試験を含めて、フィルターの設置が急速に進み、2000年秋の時点で800台(全世界)の設置が報じられている。更に、データ通信の進展に対応して第3世代(3G)のIMT-2000高速データ通信用フィルターが開発されているのが最近の特徴である。このような開発例として、海外の2例を以下に紹介することとする。

 Superconductor Week誌(Mar.12,2001)によれば、Conductus社が自社のClear Site 2100システムと3G及びPCS(個人通信システム)向け新型フィルターを発表したことを明らかにした。Conductus社営業担当副社長のJ. Simmons氏は、「新型のClearSite2100システムは、多くの製造工程改良を包含しており、多目的及び個別システム向けのより高い製造能力を実現したものである。当システムは、標準化されたフィルター一式を提供するもので、これにより世界的通信に必要なフィルターが早急に開発されることが可能となる。これは、多目的及び個別システムに対してゲイン制御を遠隔操作でき、モデムあるいはパソコンから電子的に調整できる業界最初のシステムである。このような選択肢は、事務所設置位置からゲイン制御が可能であり、他の方法では多くの時間を要する各セル区域への制御の必要性が解消される。」と語った。Clear Site 2100システムは、今4半期中に出荷されるだろう。

 Conductus社は、米国で使用されている多重PCSバンド用とアジアで使用されているIMT-2000(3G)バンド用の新型フィルターを公開した。「今まで、Clear Siteシステムは主として米国の850 MHz帯の2つのセルラーバンドで使用されていた。現在、6PCSバンドの3つとIMT-2000バンドの全3つに対して当フィルターを開示している。PCS加入者の増加に伴って、PCSネットワークもセルラー通信がここ数年間経験している干渉問題を生じ始めている。今や、当フィルターシステムは、新たに登場してきたPCS市場に対して総合的容量、カバー能力、耐干渉性、高速データ送信の解決策を提供するものである。バンド外干渉を緩和するIMT-2000ネットワークの特別な高感度の故に、今年、世界初の3Gネットワークが開始する日本で、当システムの市場が拓けるだろうと我々は信じている。昨年発表したKDDIでの画期的な実地試験結果を含む3Gサイトにおける我々の試用経験に基づき、Conductus社は搊失を増やすことなく極めて良好な選択性を提供出来るIMT-2000フィルターを開発した。US特許を出願中の本先進フィルターは、小型化され量産向きに設計されている。」とSimmons氏は続けた。

 同社は、現地試験においてClear Siteシステムは各区域の使用実績と恐らく収入を、1G及び2Gネットワークに比べ30%〜50%増加させたと報告している。KDDI及び日立との最近の実地試験において、本Clear Siteシステムはカバー率、容量、バンド幅、手動パワー及びビット誤り率の顕著な改善を呈示した。日本では、これら諸性能は既存の干渉源に因り、極度に劣化しうるものであった。

 Superconductor Week誌(Feb.5,2001)によれば、Illinois Superconductor Corporation(ISC)とKMW Inc.(無線工業界への受信端末部品とサブシステムの韓国に於ける最大手供給者)は、この度日本と韓国で今年初め採用される3G広帯域CDMA無線システムの要求をみたす先進極低温受信機システムを共同開発する協定を締結した。ISC社社長のG. Calhoun博士は、「過去2〜3年に亘って、無線工業界特にアジアのリーダー達は、極低温受信機端末(CRFE)システムは3Gネットワークが電波間干渉を抑制し且つ最高性能の達成を可能とする上で重要な役割を演じ得るというコンセンサスを醸成した。無線ネットワーク向け技術と革新的端末部品の開発における世界的リーダーの一つであるKMW社と共同して、3G顧客の要求にたいして、より効率的な対応が可能となっている。KMW社は、優れた製造会社であり当プロジェクトに革新的精神と優れた端末技術を持ち込んでいる。更にいえば、彼等の指導者は先見の明があるD. Y. Kim氏である。氏は初期の頃から超伝導技術の有利性を認識していた。KMW社は、HTS/CRFEシステムを市場へ持ち込もうと我々と共に出番を待かまえている。」と語った。

 KMW社は、富士通、ルーセント、エリクソン、モトローラ、三星など主要な無線システム製造会社へのOEM供給者であり、部品レベルからシステムレベルまでの全RF製品を開発し、製造している。これらの製品には、RFスイッチ、フィルター、切り替え可能な結合器/分割器、端末機、タワー架上増幅器、リピーター、種々の薄膜製品などが含まれている。KMW社には、韓国、中国、日本、米国内の工場及び事務所に800人が働いており、2000年度の収入として1.1億ドルを予想している。KMW社の創立者で会長のD. Y. Kim氏は、「私の目標は、KMW社を3G前置端末システムの世界的リーダーに成長させることである。改良型端末装置の性能は、無線式インターネットのサービス目標を実現する上で重要になると考えている。KMW社は、小型三次元ビーム形成技術を利用した高級アンテナへ橋渡しする新技術を導入しつつある。超伝導体に基ずくフィルターと極低温増幅器は、相乗効果を発揮して、良好な信号管理と干渉管理システムを実現するだろう。」とコメントした。

(相模)