東北精機(株)は本来、精密加工や産業用FAシステムの設計・販売をしている、山形の中堅企業である。数年前より、真空チャンバーや真空機器の製造・販売等に業種を拡大し、スパッタリング装置の製造・販売を行うことになった。製造したスパッタリング装置の性能を評価する一つのターゲットとして、高温超電導薄膜の作製に取り組んでいた。山形大学との共同研究を重ね、この度大面積高温超伝導薄膜(YBa2Cu3O7-d)の製造・販売を行なうようになった。同社は、山形大学と共同開発したスパッタリング装置(誘導プラズマスパッタリング法)を用いてYBCO薄膜を作製している。東北精機が作製した薄膜の外見写真を図1に示す。いずれも、Tcは88Kを超えるものである。 YBCO薄膜を超電導フィルタや超電導限流器等に応用する場合、薄膜の表面抵抗値や臨界電流値が重要なファクターとなる。超伝導フィルタに用いる場合には、表面抵抗の小さい薄膜が必要である。表面抵抗を小さくするためには、c軸配向した薄膜で、かつ結晶粒の面内配向度を高めることが必要である。東北精機では、全ての薄膜のX線φスキャン測定を行ない、面内配向度をチェックし品質を保証している。(図2に示される様な、YBCO102面の4回対称回折線を確認し販売することにしていると言う)。また、臨界電流値や表面抵抗値を必要としている方には、測定値を添付して販売することや、高温超電導薄膜以外にも、バッファ層の形成や保護層の形成も可能であり、ユーザーの要望に相応できるようにしたいと言っている。
日本の超伝導エレクトロニクス、特にマイクロ波エレクトロニクスの進展には、高温超電導薄膜の迅速な供給が上可欠である。ユーザーの一人としても、出きる限り安価・迅速を心がけていただきたいと願っている。詳しい問い合わせは、東北精機(株)電話023-686-6511の横尾政好氏に。
図2 YBCO薄膜のX線φスキャン(50mm角,20mm角の薄膜)
(面内配向度が良いことを示している)
(雪むかえ)