SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 10, No. 1, Feb. 2001.

9.バルク高温超伝導集合体を用いた磁場捕捉実験
_鉄道総研_


 バルク超伝導体が磁束を捕捉する現象は良く知られ、これまでにも単独のバルク体を使って磁束捕捉の効果が観測されてきた。今回、鉄道総研(藤本浩之、上條弘貴氏ら)では、同一容器内に設置され、液体窒素で冷却された複数バルク体の集合を用い、磁束トラップ磁石としての性能試験を行った。これは、将来的に磁気浮上列車の車載超伝導磁石としての可能性を探ることを目的として行われたものである。今回の予備的実験では、捕捉された磁束強度はまだ必要とされる強度にはるかに及ばないが、今後の指針を与えるものであった。

 今回の試験の概要は以下のとおりである。低温容器(外形寸法340×330×90 mm)中に全18個のイットリウム系高温超電導バルク体(33×33mm、厚さ10mm)を6×3個配置し小型バルクマグネット(198×99mm、厚さ10mm)を構成した。このマグネットを1.2 T前後の一様な磁場中冷却により液体窒素温度(77K)で着磁したところ、低温容器表面の室温空間で0.1 T以上の磁界を発生させることができた。

 これまでのバルク超伝導体を使っての磁束トラップの研究は単独の小さなバルク体を用いており、その着磁強度は1Tを超えるまでになってきているが、マグネット総体としての強度は磁束密度と磁場を発生している体積の積を大きくする必要がある。今回の試験は全18個のバルク体を用いて、総体としてのマグネットの大型化を試みたものである。現時点ではその捕捉磁界強度はまだかなり低いが、今回の実験では、磁場の測定位置がバルク体表面から13〜25mm程度離れているので、測定磁場が小さくなっており、今回の着磁条件から、バルク体の捕捉磁場は最大値に達していると予測でき、バルク体が磁石として有用という示唆が得られた。今後、さらにこのような点を考慮した試験を行っていく予定である。なお、詳細については、電気学会 産業応用部門大会2000年8月予稿集vol.2, p.795、またISS2000プロシーディングス(2000.10)を参照することができる。

(HHH)


図1 着磁した小型マグネット


図2 低温容器表面から15mmの磁界分布


図3 低温容器表面から3mmの磁界分布