SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 10, No. 1, Feb. 2001.

8.超電導式高磁場オープンMRI量産へ
_日立メディコが北米市場向け_


 鞄立メディコは、米国で開催されたRSNA(北米放射線医学会、2000年11月26日〜12月1日、シカゴ)で、NbTiを用いた0.7T級のオープンMRIの新製品"Altaire TM(アルティア)を発表し、量産化に着手したと発表した。(図1、図2参照)

 超電導を使ったトンネル型高磁場MRIマグネットの市場は、GE、シーメンスが強くPhilipsがこれに続く形で市場が構成されている(3社あわせてのシェアは90%近い)。北米市場は、世界のMRI市場動向をリードする反面、最も競争の激しい市場である。これに対して患者が閉塞感を抱かずに済むオープン型のMRIが熱望されていたが、鞄立メディコは早くから、NdFeB系永久磁石を用いた独特の非対称の二本柱デザインで独自の市場を開拓。オープンMRIの分野では現在トップシェア(40%)で二位以下を大きく引き離している。しかし、ここ数年の傾向として、オープンMRI市場の伸長が著しいことに着目した欧米各社が追撃の態勢を取り、トップメーカの今後の動向が注目されていた。

 MRIの市場は、患者がソレノイド型マグネットの内部に入る"トンネル型"のマグネットと、患者が一対のスプリット型マグネットの間の開放空間に入る"オープン"型マグネットに二分され、従来前者が0.5〜1.5T、後者が0.2〜0.3T程度と磁場強度についても棲み分けされてきた。AltaireTMを開発した鞄立メディコ技術研究所、竹島弘隆主任技師は、「MRIマグネットに要求される性質としては、患者や医師に対するアクセス性、開放性と、これとトレードオフの関係にある漏洩磁界の制約にある。実はトンネル型磁石も、開発初期には漏洩磁界の問題はあったが、アクティブシールド技術の開発によって、漏洩磁界の問題が解決され、現在では"1〜1.5T級のショートボア磁石"も主流になりつつある。しかし、超電導磁石を応用したオープン型MRIの開発では、高磁場を実現できることは容易に予想できたが、強大な漏洩磁場のシールドをどうするか、そして、磁場均一度といかに両立させるかが課題であった。」と述べた。「今回、我々が開発した超電導式MRIは、漏洩磁界を鉄ヨークで遮蔽するパッシブシールド方式が採用されている。この方式は、重量が重くなるデメリットはあるが、高磁場とオープンMRIの開放性を同時に実現することができる。」と語っている。

 同様のオープン型超電導MRIはGE、(0.7T製品発表)、SIEMENS(1T開発中)、Philips(1T開発中)などが発表し、しのぎを削るが、「高速撮像技術の本命であるEPI技術も可能で、発表以来すでに多くの注文があり、市場からは予想を上回る反応がある。」とのこと。また、AltaireTMの超電導磁石の磁気設計を分担した鞄立製作所日立研究所角川滋研究員によれば、「今回開発した0.7T級のオープンMRIは、直径約1.8mのNbTi製超電導マグネットを1対使用し、均一磁場空間は40cmDSVである。オープン型は一般に、トンネル型に比較して撮像感度が優れるため、トンネル型の1T機以上と同等の能力を持つため、既存のトンネル型磁石機とも充分競争できるはず」と述べている。

 また、信頼できる消息筋からの情報によれば、AltaireTMに採用された超電導マグネットの製作・量産化は三菱電機が担当しており、まさに、国産技術を結集した新型MRI超電導マグネット新製品の登場といえる。日本の超電導関係者にとって大変明るいニュースであるとともに、今後の国際市場での一層の活躍が望まれる。

(Clark Kent)

0.7T級の超電導式オープンMRI


図1 鞄立メディコが発表したAltaireTM(正面図)


図2 AltaireTMの開放性