室町氏らのグループは約6万気圧、1300℃の高温・高圧条件を使うことで、AuBa2Ca2Cu3O9 (Au-1223) 及びAuBa2Ca3Cu4O11 (Au-1234)の2種類の超伝導体の合成に成功している。これらは、AuBa2Can- 1CunO2n+3 [Au-12(n-1)n]で示されるホモロガス系列のそれぞれn=3、4のメンバーに相当する。Au-1234相のTcは99Kであり磁化率、電気伝導度測定によってバルクの超伝導が確認されている。Au-1223のTcは20K程度であるが転移はブロードであり、超伝導の体積分率もあまり大きくはない。現在この原因が検討されているが、低温アニールによって過剰酸素を一部除くと体積分率が上がることから、オーバードープ領域にあるものと考えられている。同グループはAu-1223相の単結晶取得に成功しており、X線構造解析が進んでいる。予備的解析によると、金は当初の予想通り平面4配位を取っており、Au-Oのチェーンが構造中を走っている。これによって、チェーン方向に長い斜方晶の格子が形成されており、123系とよく似た構造的特徴が明らかにされつつある。
室町氏の予想によれば、高圧条件下では今回の例に限らず、まだまだ多数の未知超伝導体が存在しているということであり、今後の同グループの奮闘に期待したい。
(HP)