SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.1, Feb. 2001

14.MgO中間層採用によるY-123線材10m長の
長尺・高速成膜化を推進中
_米国ロスアラモス国立研_


 Superconductor Week誌2000年12月11日号(Vol.14, No.28)によれば、ロスアラモス国立研(LANL)の超伝導技術センターは最近IBAD/ MgO 基板を用いた第2世代線材の開発に於いて大きな前進があったと発表した。YBCO成膜用基板として、ジルコニアをマグネシウム酸化物で置き換えることにより(スタンフォード大のR.Hammond博士 が最初に開発したプロセスである)、LANLの研究者は成膜速度を100倍に高めた。

 ジルコニアの上には2〜3時間掛かるのに対して、MgO上には2〜3分で成膜できるので、MgO 基板は高性能YBCO厚膜導体を経済的に製造する為に必要な高速で高信頼の"鋳型"形成プロセスへの要求にマッチするものである。LANLは、液体窒素温度で100Aを超える臨界電流と1MA/cm2の臨界電流密度をもつm級のYBCOテープを作製することができた。LANL超伝導技術センター長のD. Peterson氏は、「厚膜導体の製造で競合する技術の内、長尺テープに於いてこのような好結果の達成に成功している例は他にない。これは、MgOが実用的なプロセスであることを実証している。塗布プロセスは、ジルコニアを用いる場合に比し100倍速いので、IBADは商用的に益々魅力的になってきた。」と語っている。

 IBAD/ MgO 基板を用いた短尺テープについて報告されている最高のJc値は、膜厚2.1 μmでJc=0.83 MA/cm2、膜厚1.65 μmでJc=1.4 MA/cm2であった。当チームは、テープ幅1cmかつ12 cm長の試料でIc=10Aを報告している。これらの結果は、従来報告されているIBAD/ YSZによる値と同程度である。同研究所では、端から端まで超伝導のm長テープを作製しており、2001年にはテープ幅1 cmで1m長のテープでIc=200 Aの達成を目指している。

 LANLは、超伝導技術センターで進行中の研究に加えて、ASC社、3M社及び IGC社と、CRADA協定に基ずき第2世代線材の商用的開発を加速する為に、共同研究を行っている。現在建設中のLANL研究パークは、第2世代線材開発の為LANLと協同することに関心を持つ機関に諸施設を提供することになろう。来る5月に開所が予定されている当センターは、5つの研究所と10戸の事務所を持ち、工業界のパートナーがLANLスッタフとの協同を促進するものである。

 諸設備には、200W産業用レーザーと10 mリール/リール成膜装置が含まれており、塗布能力を年産100 kmに拡張することになろう。

 米国勢も愈々長尺化に本格的に取り組む意気込みであり、日米間の長尺化及び高Jc化に向けた開発競争は益々熾烈になることが予想される。日本勢のなお一層の奮起を期待したい。

(高麗山)