SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.1, Feb. 2001

13.Gd系高温超電導バルクで
世界最高捕捉磁場(77Kで3.3T)を達成
_高性能磁気分離装置などの実用化に大きく前進_
超電導工学研


 超電導工学研究所第三研究部の成木紳也主任研究員らは、このほど、77Kで3.3 Tの高い捕捉磁場を有するGd123系バルク超電導体の作製に成功した。

 最近、バルク高温超電導体の応用として、永久磁石よりもはるかに強力な超電導バルク磁石が脚光を浴びている。これは、123系溶融バルク体の捕捉磁場が、SmやGd, Ndなどの軽希土類元素を含む材料の開発によって、目ざましく向上し、最近ではY系の捕捉磁場をはるかに超える値に達しているためである。

 超電導バルク体の磁場を高めるには、バルク体中に分散させた非超電導物質である211相の粒子を小さくすることが有効である。超電導工学研究所ではGd123系バルク体の作製時に、粒径の小さいGd211粉末を原料として用いる程、バルク体中の211相が微細化されることを見いだした。このような微細組織制御により、バルク体の臨界電流密度を著しく向上させることができ、77Kにおける捕捉磁場を高められることを報告してきた(本誌Vol.9, No.3 (2000.6))。

 今回、Gd211相をさらに微細化するため、アセトン中でボールミル粉砕した超微細なGd211粉末を原料としてGd系バルク体の作製を試みた結果、数百ナノメートルの非常に微細なGd211が分散した直径50 mmの大型配向バルクを作ることに成功した。このバルク体表面の捕捉磁場を測定したところ、77Kで2.4Tの非常に高い値を示した。さらに、反磁場の影響を防ぐため、2Tクラスのバルク体を2個重ねてバルク間の磁束密度を測定したところ、クリープによる減衰後も世界最高の捕捉磁場である3.3Tを記録した。液体ヘリウムに比べて取り扱いが容易な液体窒素の温度で、このような強い捕捉磁場を達成できたことから、超電導バルクの永久磁石応用が促進されるものと期待される。強磁場応用としては、水浄化装置、磁気断層撮影装置、資源回収用の磁気分離装置、励磁装置、強力磁気浮上装置等への応用が考えられる。開発者の成木紳也氏は「Gd系材料はバルク体を大型化することが比較的容易であり、今後も臨界電流密度の向上とバルクの大型化によって、1個のバルクで3T程度の捕捉磁場を目指していきたい。」と話している。

 共同研究者の村上雅人第3研究部部長は、「夢と思っていた液体窒素温度で3Tを発生する超電導バルク磁石が実現できたことは大きな成果である。今後は、応用開発にもはずみがつくと思う。」と語っている。

 この研究は、通産省工業技術院のニューサンシャイン計画のもと、超電導応用基盤技術研究体の研究として、(財)国際超電導産業技術研究センター・超電導工学研究所が、新エネルギー産業総合開発機構(NEDO)から委託を受けて実施されたものである。

(ビタミンG)


図1 Gd123系バルク超電導体


図2 バルク体を2個重ねて磁場を測定する方法