SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.1, Feb. 2001

11.ITERプロジェクト
3極(日本、EC、ロシア)により進行中


 ITER (Intern. Thermonuclear Experimental Reactor)プロジェクトは、当初の半分の規模に縮小されたとは云え、なお進行中の熱核融合炉開発を目指す世界最大の国際研究プロジェクトである。Superconductor Week誌2000年11月20日号(Vol.14, No.27)によれば、本プロジェクトは1998年に行われた米国の参加中止決定にもかかわらず、再び動き出しそうな様子である。米国を除く残り3極(日本、EC、ロシア)による投資は相当程度圧縮されたが、依然として核融合発電プラント建設を目指して、2重及び3重水素融合に関して十分研究することを意図している。再設計された融合実験のコストは、約40億ドル(約4000億円)の見込みで、当初計画の半分より少ない。MITの J.Minervini博士は、「当実験は、非常に有用な情報を我々にもたらすだろうが、我々も相当なものを失うだろう。当初の設計であれば、プラズマ物理の目標を殆ど全部達成できたものを』と語った。

 選択しようとするITER実験場には、諸設備を建設する為の広い土地、搬入路と労力の調達及び十分な電力と冷却水の確保が必要である。ホスト国には、全建設費の最低25%の負担が期待されている。その上に、残存コストの大部分即ちロシアの10〜15%負担を差し引いた残りを、日本とECが負担することになるだろう。追加的な貢献が、将来参加する新メンバー例えば中国と韓国から来る可能性は残されている。

 最近の状況は、日本、フランス及びカナダの3国がITERのホスト役を引き受けるべく競っていることである(カナダはECチームの1メンバーとして参加している)。プロジェクト長のR.Aymar氏は、「プロジェクトの推進における最大の困難事は、科学上あるいは技術上の事柄ではなくて、財政的、政治的且つ社会的事柄である。ITERプロジェクトは、2013年頃までには軌道にのって進行し、21世紀の後半には核融合エネルギーが実際に商用化されるであろう」とコメントしている。

 関係国は、各々自国の有利性を主張している。日本は、他の実験場案より大きな財政的負担が可能と期待されている。日本の3つの実験場案は、1)が本州の中程に在る那珂であり、日本原子力研究所のホームグランドである。2)は、本州の北端に在る六ケ所村であり、3)が北海道の苫小牧である。ECの核融合専門家は、実験場をフランスのCaradacheに設置することに熱心である。Caradacheは、総合的に電力及び水資源を提供できると共に原子力発電プラントに慣れている地域である。カナダ案のオンタリオ市Claringtonは、技術的にみて最善の場所かも知れない。というのは当場所がトリチウム源と同時に安価な電力源である原子炉に近いからである。或る人々は、カナダ実験場は米国の宇宙ステーション以来最大の国際的共同研究プロジェクトへ復帰を誘なう最良の機会を与えるものと信じている。当然のことであるが、核融合研究者は米国が最初の実証核融合発電プラントヘの最終段階に参加 すべきであると考えている。

 まだ、どこの国も完全な提案を提出していないが、2001年の中ごろまでに実験場を提供しようとする全関係国は、コスト見積りと共にITERが各実験場を評価出来るよう十分な情報を提出することになろう。最新の時間表によれば、2001年中頃ITER関係者は各国の実験場案と関連コストについて系統的な比較を行うだろう。これに基き、代表者委員会は正式実験場とコスト分担案の検討を開始しよう。何処に諸施設を設置するかについての決定は、2002年末以前と予想される。諸提案は、2003年の建設開始と10年以内の完成を要請するものとなろう。

(こゆるぎ)

<編集部注>上記は米国の雑誌を元にして書かれたものであるが、最近の日本では、新聞報道によると、核融合の研究者間でも、政府のITER誘致に対して賛成派、慎重派がいるとされる。実際には大学の研究者に慎重派が多いとされ、慎重派の意見の大勢は、ITERという1つの方向だけに研究を偏らせることへの危険を指摘するもので、他の方式にもリソースの分散が必要という観点からの慎重派と言われる。一方、積極的反対派もおり、その意見は現行方式では施設内で、発生する中性子によって、ステンレスを主とする壁・構造材料の放射化が誘起されることを問題としている。