SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 9, No. 6, Dec. 2000.

9.NMR/ESR用を目指した無冷媒型マグネット納入
_JMT・神戸製鋼所_


 ジャパンマグネットテクノロジー(株)と(株)神戸製鋼所は、NMR/ESRへの適用を目指した無冷媒型超電導マグネットを完成し、ユーザーに納入した。このマグネットは直径100mmの室温ボア内に最大6Tの磁場を発生する。1990年代はじめに登場した無冷媒型超電導マグネットは、その後種々の磁場強度、室温ボアサイズを持つ機種が製品化され、高磁場環境での研究や材料プロセスなどへの適用が進められてきた。しかし、その多くが高い磁場強度を利用するのみで、高い磁場均一度、高い磁場安定度を要求されるNMR/ESRへの適用はなされていなかった。

 今回完成したマグネットは、従来の液体ヘリウム冷却型NMRマグネットと同様に磁場の2次4次の不均一成分を補正するコイルを備えることにより空間的な磁場均一度を高め、さらに熱式永久電流スイッチを備えると共に超電導線の接続部に超電導接続を採用することにより永久電流運転時の時間的な磁場安定度を高めている。その結果、下図に示すように、10mm領域での軸上磁場均一度は5ppm以下、1時間当たりの磁場安定度は1ppm以下を実現した。これらの磁場均一度、磁場安定度はNMRプローブを用いて測定されたものである。

 無冷媒マグネットをNMR/ESRに適用する場合のもう一つの問題は冷凍機の振動であるが、本マグネットのESRへの適用を試みているユーザーによれば、「規則的な振動は信号処理で大部分が消去可能であり、実用に耐えるESR信号が測定出来つつある。」とのことである。

 設計を担当したジャパンマグネットテクノロジー(株)広瀬量一氏によれば、「今回のマグネットの仕様は汎用のNMR用としての要求を十分満足するレベルではない。しかし、当社は従来から年間百台規模の液体ヘリウム冷却型汎用NMRマグネットを製造販売しており、この技術を無冷媒型マグネットに適用すればさらに高均一磁場・高安定磁場を達成することは、さほど難しいことではない。無冷媒型マグネットをNMR/ESR用として普及させるための課題は、停電時やメンテナンス時に冷凍機が停止することに対する処置などの周辺技術が主体となるだろう。」と語っている。

連絡先:

ジャパンマグネットテクノロジー(株):渋谷(しぶたに)笹野(ささの)(03-5739-5210)

(株)神戸製鋼所: 濱田(はまだ) (078-992-5652)

(Maya)


図1 6Tマグネット磁場均一度


図2 6Tマグネット磁場安定度