SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 9, No. 6, Dec. 2000.

7.高温超伝導光変調方式の基本特許を取得
_米国テラコム研究会社_


 高温超伝導体(HTS)の超高速スイッチング現象を利用した高温超伝導光変調器については、本誌本年8月号(Vol.9, No.4)で取り上げたが、その後さらなる進展が伝えられているので再報することとする。SuperconductorWeek誌(Oct.23, 2000)によれば、最近テラコム研究会社(TeraCommResearchInc.)は米国特許庁からUS 特許 6115170(データ伝送向け光変調方式)を受理したとのことである。本特許は、同会社のUS特許5768002及び5886809により保護されるHTS光ファイバー通信システムの統合的部品である光受信器を包含している。特許5768002は、HTS高速光スイッチを網羅しており、当スイッチは光源と非透過性超伝導状態及び半透過性常電導状態間で切り換える為の超伝導体層によって光の変調を行うものである。それより早い特許5886809の方は、周波数変換器を基本的に包含している。当変換器は、HTS変調器が発生した高速光パルスを波長の長いものから短いものヘ変換し、それによって光ファイバーが大きな減衰や分散なしに、光を効率良く伝送出来るのである。

 テラコム社のHTS変調発信器は、理論的には単一光波長でTeraBitを超えるデータ伝送能力を持っているので、同様に高速データ処理ができる相補的な受信器を必要としよう。この新特許に包含される光受信器は、HTS発信器が発生した高速光パルスを受信し、それを低速パルスへ変換する多重受信器を用いることにより、この理論的な性能レベルを達成するものである。これらの低速パルスは、次いで低速パルス用に設計されている多重の低速検出器へ伝えられる。低速度でのパルス受理により、高速光変調システムは現用されている低速エレクトロニクス機器との接続が可能となる。

 研究開発の進展については、SuperconductorWeek誌(Oct.16,2000)が『テラコム社はロチェスター大学電子映像システムセンターにおいてHTSの超高速スイッチングを実証するプロジェクトの支援を行っている。』と報じた。同大学は、本年6月以来テラコム社と非公式に共同研究を続けており、テラコム社HTS光変調器の設計及び試験について支援している。この新計画は、テスト構造の実験的評価とピコ秒電流パルス励起によるYBCOマイクロブリッジのレスポンスに対する数学的モデル開発を資金的に支援するものである。本計画の目標は、本年12月までに電流励起型HTSマイクロブリッジの最終性能限界を確定することである。

 本研究は、ロチェスター大学電気コンピュータ工学科のR.Sobolewski博士によって実行されよう。テラコム社は、YBCOサンプルを供給する。本研究は、Sobolewski博士が Applied Physics Letters(Jan.2000)へ投稿した研究論文に基いて構築されよう。当論文は、YBCOジョセフソン接合中の光励起による0.8ピコ秒SFQ(単一磁束量子)電圧パルスの直接観測について述べている。0.8ピコ秒パルスは、毎秒1.25 TeraBitのデータ伝送には必須のものである。電子映像システムセンターは、NY州科学技術学術研究局の支援を受けており、新しい超高速の光超伝導技術開発におけるリ?ダの役を果たしている。テラコム社は、当センターと連携しながら、光変調のためHTSを用いて、同社が世界最高速の光ファイバー変調発信器と信じているシステムの開発に取り組んでいる。HTS光変調器は、理論的には単一光波長でTeraBitをこえるデータ伝送能力を有すると考えられる。テラコム社は、本光変調器の実証を2001年内に予定しているという。

(相模)