SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 9, No. 6, Dec. 2000.

14.ISD法Y系線材で11m長を達成
_住友電工・東京電力_


 住友電気工業(株)は、ISS2000および2000年度秋季低温工学超電導学会において、ISD法(Inclined Substrate Depositon、基板傾斜成膜法)によるY系薄膜線材の最新の成果を発表した。ISD法はPLD法の1種であり、物理蒸着法の中でも高速成膜が可能であることから、長尺線材化の有力な手法の一つとして注目され、現在はISTECの第2フェーズの中で東京電力と共同で開発が進められている。今回の発表では、世界最大級の200Wレーザーを導入して1m/hで搬送させたハステロイ基板上に成膜したYSZ中間層で約1ミクロン/分、およびYSZ中間層上に成膜したYBCO超電導層において約4ミクロン/分という高速成膜化に成功したこと、さらにYSZ中間層では実用レベルで期待される10m/hの基板搬送速度においても1m/hの基板搬送速度の特性と遜色のない2軸配向性が確認できたこと、が注目を集めた。また、長尺化のトライアルとして初めて10mをこえる11m長の線材試作結果が報告され、一部特性の低い箇所が存在するものの、10m長区間の大部分において77KのJcが0.5〜2×105(A/cm2)であることが示された。特性が低い箇所は、成膜途中にターゲット交換のための中断を行ったためとの説明があり、今後導入予定の大型の成膜チャンバーで改良可能と報告された。気になるJc特性については105(A/cm2)台の前半に止まっているが、開発を担当する同社・電力システム技術研究所・超電導研究部の種子田賢宏研究員によれば「中間層の配向性も着実に向上しており、ISD法の特徴である『高速化』と『長尺化』に『高Jc』を加えるべく1MA/cm2を目指して鋭意開発を行っている。」とのことで、今後の進展が期待される。

 なお、これらの成果は、11/27から米国で開催されるMRS Fall MeetingにおいてもSRLから日本の成果の一部として報告されたことから、米国の研究機関が今後どのような反応を示すか、非常に興味深いところである。

(ゆきたん)


表 ISD法線材の特性代表例(住友電工提供)


写真 ISD法線材の外観(住友電工提供)