SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 9, No. 6, Dec. 2000.

10.半導体製造用に無冷媒式超伝導磁石を導入
_米国エバーソン電気_


 SuperconductorWeek誌10月2日号(Vol.14, No.20)によれば、最近米国のエバーソン電気会社(EversonElectricCompany)が半導体工業の磁気アニーリング応用向けにスプリット型超伝導磁石システムを導入したことが明らかになった。双対超伝導コイルは、それぞれ4K二段式ギホードマクマホン冷凍により伝導冷却された完全独立の単体から成り立つている。この工業所有権を有する無冷媒式双対NbTiマグネットは、2Tの磁場で稼動する。中心磁場領域は、外側の鉄磁極によって増強され、磁場分布の整形がなされる。本システムに使用されているBi系高温超伝導(HTS)電流リードは、ASC社(American Superconductor Corp.)から購入したものである。

 本システムに対する最初の注文は、ある半導体製造業者からの予定である。エバーソン社の副社長であるL.Ying博士は、「当マグネットは某メーカーのアニーリング工程に於いて試験中であり、今までのところ満足すべき結果である。当工程にたいしては、ここ20年間に亘って常伝導マグネットが使用されてきた。我々は、恐らく当工程に超伝導磁石を導入する最初のメーカーとなろう。当工程には、大きな市場があるので、本システムによる運転コストの節約は半導体工業にとって大きな魅力になるだろう。」と語った。

 無冷媒式超伝導磁石の有利性は、使い易さと保守の簡便さにある。加えて、冷媒は半導体製造工程中での汚染の可能性を高める。資本コスト(約50万ドル)は、常伝導マグネットより相当高価であるが、本新製品は磁場増強、重量軽減及び大きな電力節減を提供するものである。2Tの超伝導磁石は、重量が約2トンで冷凍機の電力消費が15kWである。これに対応する従来システムは、重量が約45トンで1.3Tを発生させる為の電力消費が170kWである。

 本双対マグネット設計により360度のアクセスが可能となるので、エバーソン電気では開放型MRI用システムの開発も始めている。エバーソン電気は、本技術を用いて0.6TMRIシステムの製作を目指している顧客と共同開発を進めている。24インチ間隔を有する当双対マグネットには、全ゆる方向からアクセスできる。そのコストは、アニーリング用マグネットと同程度になるだろう、という。(株)東芝京浜事業所の高野広久技監は、上記の報に対し、「磁気アニーリングというのはおそらくデバイスメーカーでの半導体製造工程に使用するもので、磁気を使ってアニールするものと思われます。その効果、ニーズ等調査してみたい。」とコメントしている。

(こゆるぎ)