SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 9, No. 4, Aug. 2000.

4.米国ATV社がHTS光変調器に投資決定
_米国Atlantic Technology社_


 この度、ATV社(Atlantic Technology Ventures, Inc.)は、近年次世代の高速光ケーブル通信技術を開発中のテラコム研究会社(Tera Comm Research, Inc. Burlington市)の最大の出資者になったことを明らかにした。6.8 Mドルの投資価格には、1年間の開発費5 Mドルの支払いとATV社の株式が含まれている。テラコム社は、高温超伝導(HTS)材料を用いて光の変調を行っており、当変調器が世界で最も速い光ケーブル用変調器と考えている。この変調器は通信系の電気的信号を光信号に変換するものである。「革新」的なところは、テラコム社社長のK.A.Puzey氏の発明に因るところ大である。Puzey氏は、過去3年間に亘ってこの技術をひそかに開発してきた。Puzey氏は「超伝導は既に電力及び無線分野へ付加価値をつけた。いまや我々は、この材料により、光ケーブル通信に対してユニークな価値をもたらしつつある」と語った。

 超伝導光変調器は理論的には、単一の光波長で1テラビット/秒(Tb/s)以上のデータ伝送能力を有しており、現在登場しつつある高密度波長分割多重通信方式(DWDM)に完全に適合することが期待できる。

 一方、現行の変調器は、10Gb/s付近で稼動しており、最新技術の変調器でも単一波長で40Gb/sまでしか伝送できず、テラコム社の新製品に比べて25倍時間がかかる。テラコム社の超伝導光変調器は、2つの米国特許、すなわち、Pat.No.5,768,002('98)およびPat.No.5,886,809('99)と幾つかの係争中米国特許、国際特許によって保護されている。

 当技術は、超伝導状態における吸収特性を利用している。入射するデータ列流は、電子信号が超伝導体を交互に、常伝導状態と再び超伝導状態へ駆動するにしたがって読み取られる。HTS材料が超伝導状態にある時には、光子源から連続的に供給された光子は反射され、光ケーブル向けの光子データ流を発生させる。最近、テラコム社は、当応用向けに種々のHTS材料を評価しつつある。

 ATV社の副社長で、光ケーブル通信のベテランであるW.L.Glomb氏は、「テラコム社は、真の大進歩を達成したと思っている。ATV社からの資金的支援と戦略的共同関係を以ってすれば、業界を先導する製品を来年上市しようとするテラコム社の計画を加速できると思う」とコメントしている。

 在来方式の変調器向けの市場は、数十億ドルの規模であり、主要な大会社(Lucent社, Nortel社、富士通その他)が産業界へ供給を担う。HTS変調器は、その超高速データ速度の故に、大量の集合データが、長距離に亘って伝送される必要がある通信ネットワークの中核部分で利用されるだろう。この変調器によって通信会社は遥かに大量のデータ系列を単一の光ファイバーで多重伝送することが可能になり、ファイバーの伝送帯域幅を最大化できる。一般に光ファイバーは、10Gb/s以上の伝送能力を有しているが、現実はそれより低い水準で使用されていると、Glomb氏は語った。これらのシステムの値段は、10万ドル台にあるので、冷凍機の値段はたいした問題にはならない。これは、無線通信用フイルター他の場合と同様である。さらにいえば、無線通信用に開発された冷凍機は、この新しいHTS通信応用に対して良好な試験結果と低コスト及び利便性を実証したことになるだろう。

 以上の内容に対して、国内の某光ケーブル会社半導体部門のベテラン技術者は、次のようにコメントしている。

 「現在のDWDMは、通信容量の競争はしていますが、その概念は「遅いもの×多数」が「速いもの×少数」を抑えています。これは単にコストの問題です。北米でDWDMが始まった時、すでに10Gは普通の技術であったにもかかわらず、2.5Gで始め、昨年〜今年にやっと10Gになりました。その代わり、波は100を越しそうです。また、システムを構成する上でWDMの部品(レーザー、変調器、光カップラーなどあらゆるもの)はボードに実装できることが条件となっています。このような背景から、今回の技術は今のDWDMの概念を根本から覆すものと思われますので、そのようなリスクを誰が、いつ、採用するかは、大変判断するのが難しいと思われます。」

(相模)