SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 9, No. 3, Jun. 2000.

5.225kV級高温超伝導ケーブル開発進む
_ピレリー社_


 この度、Pirelli e Sistemi(ピレリ-)社は、Electricite de France(EDF)との契約の一部として、20m長の225kV単相HTSケーブル原型を試作したと発表した。ピレリー/EDFの共同研究は、97年10月にスタートしたもので、大容量HTSケーブルの開発を目指す欧州における最初のプロジェクトである。本プロジェクトでは、実現可能性研究を行い、50m長原型ケーブルの長期間テストが計画されている。当長期間テストは、フランスのEDF試験所で行う予定という。

 ここで報告する原型ケーブルは、ピレリ-社の専用HTSケーブル試作工場で、米国ASC社製HTS線材を用いて、設計・試作されたものである。本ケーブルは、低温絶縁体型の一種であり、欧州内送電線系統の諸要求に対応している。原型ケーブルは、1W/m以下の超伝導体損失で、3000 Aまでの交流を流すことができる。その電気絶縁体は、225kVの相間電圧に耐えられるように設計されている。3相の送電線系統では、本HTSケーブルにより1000 MVAの送電が可能になるだろう。即ち、従来のケーブル技術では400kV級で初めて達成できる水準が可能になるという事である。今回の動作電圧は、前回のEPRI/DOEプロジェクトの中で性能試験に合格した電圧のほとんど倍であり、他の低温絶縁体型の例(66 kV/日本、12.5 kV/Southwire)より非常に高い。ピレリ-社超伝導技術開発部長のM. Nassi氏は、「超高圧ケーブル開発への技術的挑戦は、従来システムにとっては極めて過酷であるが、低温絶縁体型HTSケーブルに対してはより説得的である」と語った。

 98年末、ピレリー社は115 kV/400 MVAの室温絶縁体型HTSケーブルのテストを成功裡に完了した。当ケーブルは、EPRI(電力研究所)及び米国エネルギー省(DOE)のSPIプロジェクト契約の下で開発されたものである。引き続いて98 年10月、ピレリー社はDOEから3相120 m長の24 kV/2400 A室温絶縁体型HTSケーブルをデトロイト・エジソン社の送電線網に設置するプロジェクトを受託した。米国内に設置する室温絶縁体型ケーブルと仏EDF社向け低温絶縁体型ケーブルの開発に加えて、ピレリーHTS社はイタリ-国内及びドイツ国内において、低温絶縁体型同軸ケーブルを開発中である。その目的は、種種のHTSケーブルを試作・試験し、商用化開始時に当HTSケーブルの信頼性を保証することである。

 ピレリー社によれば、HTSケーブルの潜在的応用領域は大容量電力輸送系統から、人口稠密都市部への導入送電線や架空送電線の地中送電線への再配置などが考えられると言う。東京、大阪など過密大都市を多く抱えるわが国の事情は、米国や欧州に比べてより深刻であり、本誌上で既報の3相100 m 長低温絶縁体型HTSケーブルの試作・試験プロジェクトの進展が期待されるところである。

(こゆるぎ)