SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 9, No. 3, June. 2000.

12.4ビットRSFQ-D/Aコンバータを試作、動作を確認
_電総研_


 電総研の超伝導デバイス応用ラボ(ラボリーダー:東海林彰主任研究官)では、単一磁束量子(Single Flux Quantum:SFQ)を担体として動作する論理回路(Rapid Single Flux Quantum回路:RSFQ回路)を用いた高性能計測デバイスの開発を進めており、このほど、4ビットD/Aコンバータを試作し、基本動作を確認することに成功した。このD/Aコンバータの開発は、交流電圧標準の確立を目的として行われているもので、1997年4月に研究が開始されて以来これまでに要素回路の試作、動作テストを経て、今回、最初のプロトタイプである4ビットD/Aコンバータの試作と動作確認に成功した。

 現在、交流電圧の高精度測定は、被測定用の交流と正確に値付けされた直流を特別に設計されたThermal Converter(TC)に交互に入力させ、TCの熱電対出力端に発生する電圧を比較することによって行われている。このとき、直流を入力した際にトムソン効果とペルチエ効果によって発生する熱電対温度の変動による誤差は理論計算によって補正される。この方法における問題点は、理論計算による補正が正しいかどうかを実験的に確認する手段が従来なかったことにある。それを解決するために、電総研の桐生昭吾主任研究官、佐々木仁主任研究官らは、RSFQ回路によって構成されるD/Aコンバータを利用するTCの交直変換係数測定法を提案した。この方法によれば、電圧分配用の抵抗比等によらずTCの交直変換係数を正確に決定することができ、交流電圧の高精度測定が可能になる。

 今回試作された4ビットD/Aコンバータのチップサイズは4.9 mm×4.9 mm、用いられているジョセフソン接合(Nb/AlOx/Nb)の総数は約1,700個、接合の最小寸法は2.8 μm×2.8 μmである。外部回路から与えられたデジタル・コードによってD/Aコンバータの出力振幅が変化させられる(図)。今回の試験では、任意の電圧を発生させるために必要なSFQパルス(30GHz)は、定電圧バイアスされたジョセフソン接合によって供給されたため標準素子としての電圧精度は得られていない。今後、D/Aコンバータ内部に組み込まれたパルス数逓倍回路をSFQパルスの発生源として使用し高精度電圧の発生及び評価を行うとのことである。

(夢追人)


図 4ビットRSFQ-D/Aコンバータの出力波形