SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 9, No. 3, Jun. 2000.

10.低振動でハンディなパルスチューブ冷凍機と
液体窒素再凝縮器を開発
_住友重機械工業_


 住友重機械工業(株)精密事業部クライオユニット部が1段式パルスチューブ冷凍機(SRP-2620)とそれを使った液体窒素再凝縮器(RPC-180)を開発し商品化した。

 パルスチューブ冷凍機は低温部の膨張ピストンの代わりに、室温部のオリフィス類やバッファ類などを使った蓄冷式小型冷凍機である。低温部に可動な機械部品がないため、従来の極低温冷凍機に比べ、パルスチューブ冷凍機は格段に低振動で高信頼性であることが期待でき、近年注目されている。しかし現実には、高、低圧力源を生成する圧縮機とバルブユニットからは高いレベルの機械振動が発生しているので、これらの振動源を冷却部から遠ざけ、振動が冷却部に伝わらないような対策がとれるかどうかが実用上の重要なポイントである。

 住友重機械工業(株)がこの度開発した、SRP-2620型パルスチューブ冷凍機(図)の最大の特徴はバルブユニットからコールドヘッド(冷却部)までの配管が標準で4 mとかなり長いことである。今まで、冷凍機各社から数種類のパルスチューブ冷凍機が商品化されているが、バルブユニットからコールドヘッドまでの配管長は一般的に約1 m程度である。今回の冷凍機の配管長が4 mになったことで、ユーザーが冷凍機を設置する際の固定や振動対策に自由度が増え、使い勝手が良くなることが期待される。SRP-2620は1段式のパルスチューブ冷凍機であり、最低到達温度は約40 Kで、77 Kにおける冷凍能力は10 W以上である。使用する圧縮機(CNA-21)は空冷タイプで、必要とする電力は1.6/1.9 kW(50/60 Hz、200 V、3相)である。

 さらに同社はSRP-2620を使った、低振動でハンディな液体窒素再凝縮器(RPC-180型、写真)も同時に開発した。再凝縮部の大きさと重量はそれぞれφ115×567mmと6.5 kgで、再凝縮能力は180 cm3/hr(液体窒素換算)である。同社クライオユニット部設計技術課の小山知大氏によれば、「液体窒素槽への装着は再凝縮部下端のチューブを液体窒素槽の注入口に直接差し込んで固定する、という簡単な作業で済む。バルブユニットからの配管長は4mであるため、NMRのような"背の高い"理化学機器にも容易に取り付けられ、また配管の際に適切な振動対策を施せば、振動、ノイズに敏感なNMRにも使えることがすでに実証されている」という。この再凝縮器の使用により、1日あたり3〜4リットル程度の液体窒素を消費する低温装置であれば、長時間無補給で連続運転が可能になる。

 同社は今後パルスチューブ冷凍機の開発をさらに強化していく方針で、「80 Kでの冷凍能力が5 Wで、家庭用電源の100 Vで駆動し消費電力が1 kW程度の、より小型の新機種が今夏頃にも商品化されるだろう」と小山氏は述べている。

連絡先:住友重機械(株)クライオユニット部 田口(0424-68-4486)e-mail:yst_taguchi@shi.co.jp

(森のすもも)


図1 超電導高周波インターフェイス回路
中心周波数 : 1 GHz、フルスケール : 1 GHz


図2 超電導高周波インターフェイス回路の
出力信号の周波数スペクトル