ボア径は45 mmが確保されており、4 K〜RTのVTI(Variable Temperature Insert)が付属している。VTIに設置されるサンプルも小型4KGM冷凍機によって冷却される。サンプルに当たった高輝度X線を信号強度を落とすことなく観測できるように 、マグネットのX線の通過する領域はHeガスが充填されている。また、VTIは単独でも 使用できるよう、マグネットとは別の真空槽をもちBe窓を採用している。マグネットには永久電流スイッチが搭載されており、外部からの電流供給なしで長時間の連続測 定が可能となっている。マグネットの諸元を表1に示す。
スプリットコイルの難しさは、コイルが引き合う電磁力に耐えうる軽量構造設計である。中性子線用スプリットコイルの場合、ギャップ間にアルミ材を用いて電磁力を支えることができるが、X線用では,透過するX線の減衰を少なくするため透過領域には構造材を配置できない。かつ、いかに透過有効角を大きくできるかという点がポイントとなる。今回のコイルにおいて、コイル間の電磁力は、およそ50トンにも達するが、透過有効角が入側と出側で100度を確保している。巻枠のフランジ面のおよそ30%は下に支えがなく、浮いている状態となっている。変形を抑えるためフランジを厚くすると巻線間のギャップが大きくなり、高磁場発生には不利である。フランジの変形を抑えて、コイルがクエンチしないようにし、かつ高磁場を確保するという最適化を行い、このコイルが完成した。
担当者らは、「無冷媒マグネットの普及により磁場環境下での実験や各種合成、反応 プロセスは興味を集めており、いろいろな分野からアプローチが始まっている。超電導マグネットを供給する我々としては、エンドユーザーの要求に応えて、今後、さら なる用途の拡大を期待している」と語っている。
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(rokko)