SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 9, No. 1, Feb. 2000.

5.米国の全超電導変電所計画 _CSACの提案_


 Superconductor Weekの1999年10月11日号に拠れば、米国の超電導産業団体であるCSACからの提案として、EPRIのPaul Grant氏とAdvanced Energy Analysis社のWilliam Hassenzahl氏が下記の提案を行っている。

 変圧器、限流器、マイクロSMES、ケーブル、そして可能であれば発電機などからなる全超電導変電所のデモサイトを作るべきである。これにより、集中冷却システムによる経済的メリットが明らかになるばかりではなく、超電導電力機器を集中設置していった場合の得失が評価可能となる。変電所の大きさは約40m×60mであり、この中に100MVA、24kV変電機器として、100MVA高温超電導3相変圧器、30MVA高温超電導限流器3台、3MJ/30MVAのSMESを3台、100MVA高温超電導3相ケーブルを500m敷設する。これらの冷却負荷を20-30Kおよび77Kレベルで推定すると表のようになる。

 次に図に示される冷却システムの所用動力とコストの関係から、各機器毎に個別に冷却システムを設置した場合の冷却システムコストを以下の通り見積もった。

 変圧器/240kW/$450k
 限流器/240kW/$450k
 SMES/ 12kW/ $50k
 送電線/260kW/$500k
 合計 /752kW/$1450k

 一方、これらの機器を一括して冷却すると、まず常温配線との接続に必要な電流リードの数が大幅に減り、所用動力は700kWまで減少する。この700kW冷却システム1台のコストは$1000kであり、冷却システムだけで30%のコスト削減が可能である。

 Grant氏とHassenzahl氏は、この全超電導変電所に設置すべき機器には米国のSPI計画での開発成果を転用でき、2000/2001年のSPIプロジェクト2件の一部として機器を統合した場合の設計研究を$1MのDOE予算で実施すべきであると指摘している。Hassenzahl氏によれば、この設計研究は、別々のプロジェクトで異なる超電導機器を開発している科学者および技術者間の技術交流を促進し、技術的に矛盾の無いより効率的なシステムの実現を可能にするかもしれない。

 また、Hassenzahl氏によれば、まず高温超電導ケーブルが都市部の送電用に実用化され、このケーブル用冷却システムの能力を少し上げることにより全超電導変電所が実現するかもしれないと指摘している。さらに、Grant氏によれば、この計画はEPRIが提唱しているエレクトロニクス変電所構想にも合致している。この構想は今後25年で25%程度までの導入が予想されている20MW〜50MW規模の変電所設置の分散発電システムの実現にも役立つとしている。

 一般的に、分散電源の導入は電力機器の小型化をもたらし、超電導電力機器開発には逆風であるといわれている。しかし、どのような新技術でも大型機器よりは小型機器に適用し実用化していく方が容易であるとHassenzahl氏は信ずるとしている。いずれにしても全超電導変電所計画は、将来の配電レベルの電力市場において超電導技術がどのような役割を演ずるかについて我々の理解を大いに高めてくれるであろう。

 このような提案に対し、電力中央研究所の秋田調氏は、「我が国でも電力機器の超電導化を複合的に進めることにより、得られるメリットが増大するとの指摘が以前からあり、これまで名古屋大学などで検討が進められてきた。しかし、今回の提案のような配電用変電所を対象とした本格的な全超電導化研究計画は存在しなかった。2000年度からは、複数の超電導電力機器研究が国主導で実施されると予想されており、我が国でも超電導機器の複合化による効果の研究を本格的に開始する時期に来ている。」と指摘している。

(呂律)