SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 9, No. 1, Feb. 2000.

2.超電導フライホイール小型モデルの運転試験が成功裏に終了
_四国総研_


 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の小型モデルの運転試験が、平成10年7月から(株)四国総合研究所の手で行われ、平成11年11月に無事終了した。

 同機は、通産省のサンシャイン計画の一環で、NEDOが平成7年度から進めているプロジェクト「高温超電導フライホイール電力貯蔵研究開発」の中で製作された試作機であり、直径400 mmのCFRP製フライホイールを含む、回転体全重量37 kgをYBCOバルクを用いた液体窒素冷却のアキシアル型超電導軸受で全て支え、制御型磁気軸受を併用して、完全非接触の高速回転を行う超電導フライホイール電力貯蔵システムである。平成10年3月には、全体組み立てを担当した光洋精工(株)の工場において、定格30,000 rpm (0.5 kWh)の回転に成功していた(本誌Vol.7, No.3, 1998.6 既報)。その後、プロジェクト参加の一員である四国総合研究所の松山FW研究センターに移し、1年5ヶ月にわたって同所の手で運転試験が行われたものである。

 運転試験の責任者である同所の石川文彦所長によれば、トラブルらしいトラブルもなく、順調に試験が進み、運転時間は延べ1110時間、システムの起動・停止回数が196回、超電導軸受のヒートサイクル(室温〜液体窒素温度)が292回に達したという。

 運転試験の成果については、まず、本機の製作主目的である超電導軸受支持の回転制御技術の検証をあげる。超電導軸受の剛性、ダンピングの不足を制御型磁気軸受で補助することにより、定格回転までの全領域にわたって回転体の振動を30 mm以下に抑制でき、安定な高速回転が可能であることを確認できた。これによって、超電導バルクの高速回転機器への応用に確証が得られたことが大きい。

 電力貯蔵システムとしての性能については、まだ、荒削りの作品であるため、数値を議論する段階にないが、7,000 rpm と、25,000 rpmの間でエネルギーの入・出力を行った貯蔵効率試験では、43%(交流端、待機時間なし)という測定値が得られている。効率が高くない原因は、制御型磁気軸受の回転損失等によるものであることが要因別に分析できており、別途、行っている要素技術の研究成果の組み合わせにより、効率向上に見通しがたっているという。

 超電導軸受の安定性については、超電導軸受の載荷力の経時変化を見る限りでは、1年余の試験でも劣化の兆候はないとのことである。詳細な判断は試供バルクの観察を待たなければならないが、超電導軸受として作動させる雰囲気では、YBCO超電導バルクの劣化は心配なさそうである。

 なお、運転試験を終了した本機は、現在、全体を製作した光洋精工において解体研究に供されており、長期にわたる運転試験後の超電導軸受やフライホイール本体の劣化状況などが調査されている。また、プロジェクトでは、この小型モデルの成果をうけて、現在、次の中型モデルを製作・調整中である。直径1,000 mmのCFRP製フライホイールを17,200 rpmで回転させて10 kWhを貯蔵する。本機は、大型システムに適したラジアル型超電導軸受を組み込むことを前提にしたアウターローター型の構造をとっており、基本構造の検証とともに、こうした構造のための高速回転制御技術の検証を行う予定である。

(FWwatcher)


写真:小型モデルの運転試験研究施設


図:小型モデルの構造