SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 6, Dec. 1999.

5.高温超電導磁気浮上軸受開発試験機の使用開始
―中部電力梶E三菱重工業 ―


 中部電力(株)と三菱重工業(株)は、共同で電力関連技術の重点開発項目である電力貯蔵技術として、高温超電導磁気軸受を用いた電力貯蔵用フライホイールの開発に取組んでおり、すでに、1 kWh機により20,000 rpmで1.4 kWhのエネルギー貯蔵を達成している。高温超電導磁気軸受は、制御不要で低損失の為、電力貯蔵用フライホイール装置だけでなく一般機械への適用も目標に、性能向上や、大型化の開発が進められている。

 中部電力(株)電力技術研究所超電導チームリーダー長屋重夫研究主査と三菱重工業(株)高砂研究所応用物理研究室南正晴主査及び高砂製作所開発室河島裕主査等は、高温超電導磁気軸受の極めて低損失の軸受単独特性に関し、特性に関連する種々のパラメータを変えながら、高精度かつ効率良く試験を進めるために、超電導体冷却温度、初期冷却時の磁場条件、軸受面圧及び回転速度をパラメータとし、反発力、軸及び半径方向の支持剛性、回転損失等の試験が容易に精度良く実施できる装置を開発した。

 従来の軸受特性評価試験装置は、供試体軸受と駆動装置が一体化され、さらに回転支持のため常電導磁気軸受等他形式の軸受との組合せを必要としていたため、本質的に小さい超電導磁気軸受の損失を、直接計測される回転系全体の大きな損失より分離し求める必要があり、精度良く求める事が困難であった。

 本試験装置では、駆動系の機械的、電磁気的損失を根本的になくすために、電磁クラッチによる、供試体の超電導磁気軸受回転部を昇降速後に駆動部より切り離し、他形式軸受との組合せを行わず、単独で浮上回転が行なえるようにしてある。回転部の速度低下を静止側から非接触で逐次高精度に計測し、慣性エネルギーの変化から損失量を算出して、軸受単独の損失を極めて高精度に計測することに成功した。

 また、高温超電導体の特性が冷却温度で大きく変わることにより、液体窒素の過冷却レベルよりも更に低温が容易に得られる改良ソルべーサイクル1段型の極低温冷凍機を採用し、超電導体表面で最低到達温度47Kを達成し、超電導体表面温度計測に基づくヒータ加熱のフィードバック制御により、高精度且つ安定した超電導体表面温度制御を実施、寒剤補給不要による冷却作業の自動化及び長時間無人運転も実現した。

 本装置を用い、1kWhフライホイール装置で製作した、アキシャルギャップ型の超電導磁気軸受の軸受単独性能について、冷却温度及び初期磁場条件等のパラメータ試験を行った。特に回転損失は、80Kと50Kの比較では、約1/3と大幅な改善が確認できた。 実用面で本軸受は、冷却温度65 K、初期隙間20 mmが適当なことを確認、超電導磁気軸受の回転数による損失の変化については、回転数の一乗及び二乗に比例する項に分けることにより、良い近似を得る事が出来た。

 今後、載荷力を更に上げた場合の軸受損失や横剛性の増加についての検証、超電導磁気軸受の長期運転における特性変化の検証等に本装置の使用を計画している。アキシャルギャップ型軸受の試験だけでなくラジアルギャップ型や両者の複合軸受、低損失の回転駆動装置の開発等にも容易に使用が可能な設計としていることから、多くの研究者による幅広い活用が期待される。(YUH)


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