SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 6, Dec. 1999.

18. 超伝導:インサイドストーリー


超伝導とインターネットとゴールドラッシュ

 高温超伝導の発見後1987年を中心に超伝導新物質探しに参加した1万人を超す人々はエイティーセブナーズと呼ばれた。これは1846年にまだ開拓農家が400軒しかなかったカリフォルニアの開拓地で砂金が発見され、一攫千金を狙って世界中から年間2万人以上も押し寄せた金鉱堀りをフォーティーナイナーズと呼んだことによる。彼らは、開拓地に侵入し、所有者の財産を略奪、所有者は成功者にはなれなかった。そして、夥しい数のフォーティーナイナーズも、財をなした人はほとんどないと言われる。そして、実は本当の成功者は、弁当売りだったという話がある。高温超伝導ゴールドラッシュと何か似ているところがある。高温超伝導で成功したのは、超伝導物語を出版した本屋と著者、超伝導用試薬を発売した試薬会社、電気炉屋、そしてメノウ乳鉢屋ではなかったかといわれたものである。

 米国物理学会長を務め、多くの高温超伝導研究者からその人柄を愛されているアンクル・テッドことTed Geballe(ジボール)スタンフォード大学教授の奥さんの実家は、ジーンズで有名なリーバイスの創始者 Levi Straus氏の家である。Levi氏はドイツから移民し、ゴールド・ラッシュの労働者を目当てに弁当屋を始め、成功した。彼はその成功をもとに、初めてのブルージーンズを作り、今の名門リーバイスを育て、アメリカンドリームを実現した。

 米国でも最も豊かな州となったカリフォルニアは実はこの金鉱が生み出した富によるものではなく、その後間もなく興った製造業によるものとされる。そして今、この地はインターネット・ゴールドラッシュに湧いている。マイクロソフト社の富はIBM社を抜いて、世界最大のGE社をも抜くと言われている。マイクロソフト社を興したビル・ゲイツ氏は、「大切なことは、カリフォルニアの土地にあるのではなく、そこに価値を与えることである」と常々主張しているが、興味深いことは、上記Levi氏の成功を彼が教訓として語っていることである。

 興味ある人は、ビル・ゲイツ著、西和彦訳、「ビル・ゲイツ未来を語る」、アスキー出版(1995)を参照されたい。あるいは、時間のない人はビル・ゲイツ氏のホームページ
http://microsoft.com/BillGates/columns/1995essay/essay951206.htmに彼自身が執筆しているThe Internet "Gold Rush": Where's the Gold? December 6, 1995 By Bill Gates のページをお勧めする。

 超伝導の真の成功者はそれにどうやって「価値」をつけるかにある。出よ、超伝導のビル・ゲイツよ!