一般向けの超伝導の解説本である。ブルーバックスのシリーズでは、久々の超伝導ものである。超伝導の基本特性をはじめとして、超伝導浮上がマイスナー効果ではなく、ピン止め効果によって生じることなどが易しく解説されている。
超伝導を説明する前準備として、量子力学や熱力学にもやさしく触れており、読者のひとりが、「大学の授業で、熱力学をこれだけ分かりやすく解説してくれていれば、もっと勉強したのに残念でならない」という書評が載っているが同感である。また、超伝導原理に関しても、モヤモヤと分かりにくい部分が多かったが、本書を読んでなるほどナットクさせられた。
一般向けの本ではあるが、超伝導研究者にとっても、超伝導の基礎を勉強しなおす本として最適である。また、ピン止め効果についても、原理から応用まで分かりやすい。
内容は、対話型を基本としており、登場人物は多様であるが、あまり肩が凝らずに最後までいっきに読むことができる。超伝導の本質を知りたいという方にはお薦めの一冊である。(M. J.)
本書は堂山昌男、小川恵一、北田正弘監修による材料学シリーズの1巻であり、材料系学生の教科書をめざしている。よって、大学ではじめて高温超伝導に興味を持った学生や大学院生が、超伝導研究を開始するにあたっての手引き書として書かれている。
このため、超伝導の原理に関しても、第二量子化の手法を使わずに、高校の数学の知識があれば分かるように書かれている。全体としては、超伝導現象入門から出発して、高温超伝導の基礎から応用までをまとめている。特に、第二種超伝導体の基礎やピニング効果と磁気特性の関係については、ていねいにまとめられている。ともすれば、難解になりがちな超伝導現象を実験家の立場から分かりやすく解説されているのが本書の大きな特徴である。超伝導研究の入門的教科書としてだけではなく、企業などの材料研究者にも役立つ本である。
具体的な内容は、第1章で超伝導現象が紹介され、第2章では、電気抵抗の発生原因からスタートして、BCSの超伝導機構が平易に説明されている。第3章では、磁場侵入長やコヒーレンス長など超伝導を特徴づける重要なパラメータが導かれている。第4章は、熱力学を基本としてギンツブルグ-ランダウ理論が解説されている。第5章と第6章では、過去の高温化の歴史と、高温超伝導体の特徴が示され、第7章から第10章までは、第二種超伝導体の磁気的特性とピニング効果の重要性がくわしく解説されている。また、第11章では、高温著伝導応用の現状が紹介されている。また、付録として、本文で説明の足りなかった箇所を捕捉しているが、rotの項は分かりやすい。
副題として「応用への礎として」とあるが、応用開発だけでなく、超伝導の基礎を復習する本としても役に立つ一冊である。(N. S)