今次会議の特徴は、超電導関連のベンチャー企業の創業者の方々を招いて、これまでにぶつかった問題や、それらをどう乗り越えていったかという点も含め、超電導の産業化の促進に向けた貴重な議論ができたということであろう。米国では、電力、エレクトロニクスの両分野で、ベンチャー企業が非常に活躍している。また、EUにおいても、大学のスピンオフも含め、超電導分野でのベンチャー企業の動きが注目されている。日本においても、1994年(株)移動体通信研究所が設立され、今年4月同研究所が進めてきた高温超電導フィルタシステムの技術を継承して、マルチメディア化に対応した次世代移動体通信技術の事業化を目指した技術開発を行う(株)クライオデバイスが設立された。今次会議には同社の青木社長の出席、講演をお願いした。
会議は、Opening、Session1、Session2からなっており、以下の方々の講演等があった。
Chairperson = Mr. M. Higuchi (ISTEC Japan)
Welcome and Greetings
Opening Remarks:
Mr. T. Ohnishi (AIST, MITI, Japan)
*Session 1: Overview of Superconductivity Technologies in Europe, Japan, and the United States
Chairperson = Dr. H. Kaminosono (Central ResearchInstitute of the Electric Power Industry, Japan)
Dr. D. W. Willen (NKT Research Center, Denmark)
Dr. J. Farre (Nordic Superconductor Technologies A/S, Denmark)
Dr. M. Sander (Forschungszentrum Karlsruhe, Germany)
Dr. G. J. Yurek (American Superconductor Corporation, USA)
Mr. C. H. Rosner (Intermagnetics General Corporation, USA)
Dr. P. M. Grant (Electric Power Research Institute, USA)
Dr. T. Nakahara (Sumitomo Electric Industries, Ltd., Japan)
Dr. S. Tanaka (ISTEC/SRL, Japan)
*Session 2: Lessons from Venture Corporations
Chairperson = Dr. N. Tamagawa (Du Pont KK, Japan)
Dr. J. Farre (Nordic Superconductor Technologies A/S, Denmark)
Mr. C. H. Rosner (Intermagnetics General Corporation, USA)
Dr. G. J. Yurek (American Superconductor Corporation, USA)
Dr. O. Tsukamoto (Yokohama National University, Japan)
Mr. M. Aoki (Cryodevice Inc., Japan)
Session2の"ベンチャービジネスに学ぶ"では、超電導技術の商業化に果たすベンチャー企業の役割について議論が行われ、その振興策が討議された。今回のサミットの特徴は、何といっても、超電導に関わるベンチャー企業の創立者等が招待され、直面するであろう課題や立ちはだかる課題に対していかに果敢に立ち向かっていくかについて重要な意見交換ができたことであろう。更に、国際協力はもとより、産官学の協力を推進するための枠組みの確立が不可欠であることが認識された。超電導技術のような革新的技術では、ベンチャー企業に期待するところが大きく、本サミットでこのような議論の場が持てたことは意義深い。超電導技術の産業化に向けては、日米欧でやや問題の捉え方に違いがあるのかも知れない。欧州は、EUのフレームワークの下での、中小企業と大企業の連携を含めた産官学の協調体制の重要性を強調し、米国は、独立精神こそが成功の秘訣であると言いたかったようである。いずれにしても、日米欧ともに、ベンチャービジネスが育つような環境作りが非常に重要であるという点では、完全に一致した。
以下は、共同コミュニケに明記されたISIS-8の合意事項である。
(1)来世紀には、急速な情報通信産業の進歩に伴い、電力需要は増加することが見込まれている。電力需要の増大と省エネルギーや環境問題の重要性などの面から、将来技術に対する要求は今後さらに高まる。HTSは、環境にやさしいエネルギー供給という困難な問題に対する最も有効な解決策の一つとして、ますます重要視されている。従って、HTS技術の研究促進と実用化のスピードアップの必要性は強調し過ぎることはない。
(2)超電導の製品化又は実用化のレベルは分野毎に異なるものの、着実な進歩が期待されている。
(3)HTSの研究開発と実用化活動の殆どは現在、民間部門によって行われているが、その活動をさらに支援し、促進するためには、国際的協力と公的支援の双方の強化が不可欠である。
(4)ベンチャー企業は超電導の実用化に大きな役割を果たすであろう。また、優遇税制の導入や株式市場の整備など、政府はベンチャー企業が成長できる環境整備に努めることが必要である。
(5)HTSの実用化を促進するには、企業が継続的な投資により研究開発を推進することが必要条件である。政府もまた、超電導計画の整備を継続的に行わなければならない。さらにまた、研究開発に関する情報が公開され、関係機関がこれを利用できるようにすることが望まれる。
(6)できるだけ速やかに、製造プロセスのスケールアップに努めることが必要である。
(7)国際協力の促進に果たすISTECの役割と貢献が広く認識された。参加者はISTECに対して、これまでの活動の継続及びその発展を求めた。
次回サミットはCONECTUS主催により2000年10月1日〜3日、デンマーク、コペンハーゲンで開催することが合意(暫定)され、ISIS‐8は閉幕した。
コミュニケは、後日ISTECホームページに掲載されます。ご関心がおありの方はISTECホームページhttp://www.istec.or.jpをご覧下さい。
(えきたいちっそ)