SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 5, Nov. 1999.

6.HTSフィルター供給の5年契約を締結
―米国移動体通信・STI社―


 昨年、本誌(Vol.7, No.5)で米国のベンチャーであるSTI社のHTSフィルター大量受注(50台)報道を取り上げたが、この度、STI社は米国移動体通信社と5年契約を締結したことを明らかにした。今回の発表は倍増の規模の長期供給契約に関するもので、HTSフィルターがいよいよ実用化段階へ突入したことを示しており、以下最近の動向を紹介したい。

 この購入契約に基づいて、米国移動体通信社は来年度、最低100台の「スーパーフィルター」(商標)を購入し、引き続く4年間に最低400台の同システム購入を予定している。同じく当契約に基づき、STI社は米国移動体通信社に対して、STI社の株券を1株当たり4ドルの価格で、100万株まで購入できる権利を付与する保証書を発行する予定である。一方、米国移動体通信社は購入した「スーパーフィルター」の25万ドル分につき、STI社の1株を購入する権利を取得するというもの。

 米国移動体通信社、技術・ネットワーク運用部のR.Goehring副社長は、「1年以上前に、米国移動体通信社は、同社の特定地域のネットワークでSTI社製品の現地試験を開始した。試験結果によれば、ネットワークの運転機能と営業成績が大いに改善されるものであった。これらの試験結果により、STI社のフィルタ技術を採用し、米国移動体通信社の2,200ヶ所以上の区域基地局にこの技術を導入しようというわが社の意思決定の妥当性が実証された。この購入契約は、今後両社が将来の動向を予測し、STI社製品を継続して米国移動体通信社のシステムに採用していく最初のステップとなろう」と語った。 また、当契約は今までの現地試験に追加して、米国移動体通信社の拡大中のCDMAネットワークと都市・郊外応用区域での現地試験実施を加速することになるだろう。米国移動体通信社副社長のS.Clark氏は、「我々は、1年以上にわたってSTI社製品のテストに携わり、同製品の性能、信頼性、実用性について満足している。いまや、STI社の高温超伝導技術がわが社のネットワークで実証されたので、我々は顧客にさらに高い水準のサービスを提供することを期している」とコメントしている。さらにSTI社のM.P.Thomas社長は「我々は今回の広範囲の契約締結を大変喜んでおり、米国移動体通信社と真の長期的友好関係を取り結ぶことができ、感謝、感激している」と語った。

 なお、シカゴ市に本拠を置いている米国移動体通信社は、米国の10大移動体通信サービス会社の一つで、全米の移動体通信システムに対して、設備投資と管理・運用を行っている。1998年12月31日現在、米国移動体通信社は全国145の市場で、システム運用を統括しており、メイン州からハワイへ至る200万人以上の顧客へサービスを提供している。同社は、今後いくつかの移動体通信サービス会社へ、当システムの採用を働きかけていく計画という。

                         

(こゆるぎ)