このハイブリッドマグネットの外側に配された超伝導マグネットは、室温有効内径40 cmの空間に15 Tの磁場を発生する能力を有し、内側に水冷銅マグネットを組み込むことができる。今回、和田仁、木吉司、佐藤明男、浅野稔久、松本真治、小菅通雄、湯山道也、永井秀雄の各氏らのグループと、東芝(星野昌幸氏ら)との共同研究により開発されたビッター型マグネットは、内層、中層、外層と三つのブロックからなり、最内層と中層には、同研究所で開発された高強度の銅銀合金が使われている。
TMLは、共同利用施設として昨年度から国内外の研究者に開放されているが、水冷銅マグネットは励磁時にかかる強い応力によって消耗するため、これまで一般的に提供する磁場は30 Tを限度としていた。新開発された内径 32 mm のビッター型マグネットは、今回の最高磁場を発生した後でもマグネットに劣化が見られず、また、磁場発生中の冷却水の温度も従来のものより低く抑えられており、設計どおりの十分な強度と冷却性能を持っていることが確認された。ビッター型マグネットでは補修等が比較的容易であることから、今TMLのハイブリッドマグネットgama後は一般研究者への磁場提供に際しても、35 T程度までは安定して供給できるようになると考えられる。
今回の新マグネットの開発により、先端超伝導材料の高磁場特性が具体的により精度よく計測できることになり、超伝導の研究に与えるインパクトは大きい。和田仁総合研究官は、「新磁気科学に代表されるように、強磁場の応用はますます多様、広範なものとなっている。磁場の利用限界が広がったことは利用者ニーズへの対応能力幅が増えたことになり、TMLとして特に嬉しい。今後は、利用者の多様なニーズに、より柔軟に対応できるよう、磁場設計の技術を向上させたい」とコメントしている。
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