SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 4, Aug. 1999.

4. 次世代線材開発プロジェクト本格的推進へ
_ISTEC・SRL_


 希土類系超電導体、いわゆる次世代線材に関しては、IBAD法や傾斜スパッタ法の開発などにおいて、日本勢が世界をリードしてきた。最近、米国では次々と大掛かりなプロジェクトが開始され、その進展は著しく、日米間の開発競争において予断を許さない状況になっている。日本の開発体制に対して心配の声が上がりつつあった矢先、下記の朗報がもたらされた。

 国際超電導産業技術研究センター(ISTEC)超電導工学研究所(SRL)では平成10年度より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託研究「超電導応用基盤技術研究開発」プロジェクトを発足させていたが、この度、その一環である「超電導線材要素技術の開発」(略称「次世代線材開発」)プロジェクトにおいて、長尺化を見込んだ研究開発を一層、強化・推進するため、関係企業7社の参加を得て、開発体制を強化、再編成することが明らかにされた。

 すなわち5月下旬開催された再委託先等選定諮問委員会で住友電工/東京電力、フジクラ/中部電力、古河電工、東芝、昭和電線電纜の7社が選定され、8月中旬NEDOとISTEC間の契約締結が行われ、ISTECと7社間の再委託契約締結を俟って、近く正式にスタートするもの。

 本プロジェクトの目的は、平成14年度までの4年間で、次世代超電導材料の1,000 m級長尺線材化技術の研究開発を行い、実用規模の線材作製の見とおしを得るとともに、その作製技術の確立をめざすものである。応用基盤開発予算としては、平成11年度分32億円が決定している。これは前年度対比7億円の大幅増額(28%up)であり、主として上記開発体制の強化・再編成のためという。

 ここでいう「次世代線材」とは、現在すでに開発レベルの高いビスマス系超電導線材に対して、77Kでの強磁場特性に優れるY123、 Nd123など希土類系(RE)123構造の線材を指す。RE123 系超電導テープ線材の要素技術として図のように@基板材A中間層B超電導層、それぞれに最適な材料を探索すると共に、各種基材による基材形成技術、クラック発生防止層及び面内配向性等を与える中間層の形成技術、気相法及び液相法を用いた高品質で厚い超電導層の高速厚膜形成技術を開発する計画である。開発計画と今までの開発経過の詳細については、来る10月17〜19日、盛岡市で開催予定の第12回国際超電導シンポジウム(ISS '99)で発表される。

 上記の体制強化は、日本が先鞭をつけた独自技術に対する自負と当技術発展への決意表明と見られる。今後、本プロジェクトの進展を注目しつつ、ISS '99での発表を期待したい。

(YF)


図 次世代線材の構造および開発課題