SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 4, Aug. 1999.

2.7万kW級超電導発電機7万V実系統での連系試験成功
_Super-GM・関西電力_
今井義博(超電導発電関連機器・材料技術研究組合)


 超電導発電関連機器・材料技術研究組合(Super-GM:理事長 森井清二 関西電力相談役)は、かねてより関西電力椛蜊續ュ電所構内の当組合試験センターで7万kW級超電導発電機(モデル機)の実証試験を進めてきましたが、この6月17日に全ての試験を計画どおり成功裏に完了しました。この間、超電導発電機として、世界最高出力79,000 kWの達成、世界最長の1,500時間の連続運転の達成など多くの成果をあげてきました。特に、試験の終盤では、関西電力と共同で実系統との連系試験を行い、電力系統の各種変動に対して安定した運転特性を実証しました。これまでの実証試験結果から、20万kW級パイロット機の設計・製作技術の確立に見通しを得、さらに今回、世界初の7万V実系統への連系試験の成功により超電導発電機の実用化へ大きく前進しました。

 超電導発電機は、現用機に比べ、電力系統の電圧安定化効果が高く、長距離送電線では送電容量を30%増大でき、また、発電効率を約1%向上できます。これらにより、発送電設備の環境適応性向上や低コスト化が一層推進できるため、次世代の発電機として注目され、実用化が期待されています。

 組合では、通商産業省工業技術院のニューサンシャイン計画の一環として、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託を受けて、1988年度から12年計画で超電導電力応用技術開発を行ってきました。7万kW級モデル機は、将来の超電導発電機の実用化に向けて20万kW級パイロット機の設計・製作に必要な要素技術の開発とその検証を目的とし、励磁制御(速応性)とその界磁巻線(超電導導体)、ダンパ構造、熱収縮機構など仕様の異なる3つのモデル機回転子(低速応型A機、低速応型B機、超速応型)と、これら回転子に共用される固定子の開発を行ってきました。

 本実証試験は、平成9年3月より実施しており、1号機である低速応型A機については、平成9年12月に実証試験を終了し、超電導発電機として世界最高出力を達成するとともに効率の向上、進相運転可能領域の拡大、低同期リアクタンスなど、超電導発電機の優れた特長を実証してきました。2号機である低速応型B機は、平成10年3月より9月まで試験を実施し、この間に世界最長の連続運転1,500時間(DSS運用を含む)を達成するとともに、電力系統で遭遇する過酷な事故(三相短絡)に対しても機器の健全性を検証するなど7万kW級モデル機の運転信頼性を実証できました。

 3号機である超速応型機は、平成10年12月より本年6月まで試験を実施し、低速応型機と同様の研究成果を得るとともに、超速応型機の特長である発電機電圧を高速に調整できる励磁速応性を検証しました。さらに今回の電力系統との連系試験では、世界で初めて7万V送電系統につなぎ世界最大容量の40MVAの調相機運転で実施しました。試験の期間中、発電機は、機械的・電気的に非常に安定した状態で運転し、また超電導発電機の特長である電圧維持機能等も検証することができ、パイロット機に向け貴重な知見が得られました。

 また、冷凍システムについても、超電導発電機と組み合わせて試験を実施し、系統連系試験を含め9,000時間におよぶ一連の試験期間中、一度の故障もおこさず、安定して超電導発電機に液体ヘリウムを供給することができ、実用の超電導発電機に使用できる運用性、信頼性を示しました。

 超電導発電機の実用化へのプロセスは、実証試験および系統連系試験の成果を次のステージであるパイロット機の設計・製作に反映し、パイロット機において一層の性能向上を図るとともに、実際の電力系統における長期の運転信頼性および原動機と結合した運用性を検証し、総合的な実用性の検証という段階を経て2010年代には実用化に至るものと予想しています。


図 超電導発電機の系統連系試験実施状況