SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 4, Aug. 1999.

18.高速超伝導赤外線センサーの開発
_ロチェスター大・モスクワ教育大_


 前号(Vol.8, No.3)に続いて赤外線センサー開発のニュースを紹介する。

 このほど、ロチェスター大学(ニューヨーク市)とモスクワ教育大学(モスクワ市)が共同して、3〜10ミクロン領域、かつ高速度(25 GHz)で、最小1光子の光を検出できる超伝導赤外線センサーを開発したことが明らかになった。ロチェスター大学電気工学・コンピューター工学のR. Sobolewski教授は、当センサーは単一光子を検出し得る数少ないセンサーの一つであると語った。もっと意義深いのは、素子の検出感度と動作速度が同時に高いことである。というのは従来の赤外線センサーではより感度が低いか、または低速であるからである。単一光子がNbNに入射すると、励起準粒子の"雪崩"を発生させるに十分な電子過熱を引き起こし、検出が可能となるものである。

 Sobolewski教授は、当センサーの応用可能性について「光−電気変換器(光入力と超伝導エレクトロニクス間の超高速インターフェース用)から、THz単一光子センサー(宇宙天文学用)まで広がる極めて多様な応用可能性がある」とコメントしている。当素子は、高帯域衛星通信用受信器としても役立つであろう。ロチェスター大学は、ジェット推進研究所(JPL)と共に、赤外線遠方宇宙望遠鏡開発の可能性を検討中であり、国防先進研究計画庁(DARPA)からの高帯域通信技術提案要請に応えて、衛星通信開発プロジェクトを提案したところである。

 Sobolewski教授のグループはミリ波の検出及び混合用NbN素子を開発しているモスクワ教育大(MSPU)と共同研究を行っている。MSPUはロチェスター大のために、膜と素子を製作し、ロチェスター大が時間領域測定による評価を担当し、また、光学その他の応用のため、これらの素子を活用している。本共同研究活動は、国際共同研究計画を有する米国海軍により資金援助されているという。

(高麗山)