SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 4, Aug. 1999.

13.転位型高温超電導ケーブル開発進展
_東京電力・住友電工_


 東京電力と住友電工は、1999年度春季低温工学・超電導学会(1999.6.7〜9、於:北海道大学)の中で最近のBi系転位型高温超電導ケーブルの開発の進展について発表した。両社は高温超電導ケーブルの交流通電損失を低減するための一手段として、転位型高温超電導ケーブル、および丸形状線材の開発に精力的に取り組んでいる。撚線加工に適した断面形状を持つ丸形状線材(丸線)の開発について、住友電工の種子田賢宏氏から報告があった。課題であったJcの向上については、丸線のフィラメント内部のBi2223相の結晶粒の配向性の向上により、短尺線材で従来のJc=10,000 A/cm2級からJc=12,000 A/cm2級へ向上し、また、50 m長の長尺線材でもJc=10,000 A/cm2の特性(いずれも液体窒素中、自己磁場下)が得られたという。また、高Jcの丸線を用いた2 kA級の転位型高温超電導ケーブル導体の開発に成功したとのこと。母材の合金化による高強度化により、撚線を機械的に劣化させることなくスパイラル状に集合することができたという。

 これまでBi系高温超電導ケーブルの分野ではJcの高いテープ線を素線に用い、積層することで大容量化した多層型ケーブルの開発が進められてきた。しかし、この構造で積層枚数を増やしていくとケーブルの外側に配置された素線はインピーダンスが小さくなるため、交流通電時に電流分布に偏りができる。この現象は偏流と呼ばれ、交流通電損失の増加要因となっていた。偏流は導体のインピーダンスの不均一により発生するので、どの素線もインピーダンスが等しくなるように調整すれば偏流は解消される。多層導体では各層のスパイラルピッチを調整する方法やテープ線同士を撚りあわせる方法が提案されているが、将来の大容量送電ケーブル等には撚線を用いた転位型導体の方が交流損失が小さく、有利であると考えられている。

 素線を自由に撚りあわせるためには断面形状が円形の新しい線材_丸線_を開発する必要がある。従来のBi系高温超電導線材は超電導結晶が板状であることを利用し、テープ形状に成型することで、緻密で配向した結晶組織を形成し高Jc特性を得ていた。両社が開発した丸線ではフィラメントの形状をテープ状にすることで高Jc特性を得ることができたという。さらに、種子田氏は当日の発表の中で最近の試作結果に言及し、さらに丸線の高Jc化が進んでおり、トップデータでJc=16,000 A/cm2級の線材が得られていることを明らかにした。

 導体化を担当した住友電工の向井英仁氏は「実際の超電導ケーブルはドラムに巻いて運送されるため、導体は曲げても劣化しにくいスパイラル状に集合することになる。この集合方法で機械的に劣化なく導体が製作できることが今回の試作で確認できた。撚り本数・集合本数の増加による素線あたりのIcの低下が見られたが、これは導体の自己磁場による劣化であることが明らかになった。今後は素線のIc-B特性の向上が大きな開発課題となる。」と述べている。

(まるちゃん)