SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 4, Aug. 1999.

10.高温超伝導ジャイロスコープ提案/衛星の軽量化に
_テキサス超伝導センター_


 このほど、テキサス超伝導センター(TCSUH)応用研究部門長のWei-KanChu博士は、衛星用回転儀の軽量化及びエネルギー消費低減のため、高温超伝導(HTS)ベアリングの応用開発を提案したと発表した。衛星用回転儀は宇宙空間での安定化ジャイロスコープとして働き、衛星の位置保持と回転運動量による安定化に役立つ。衛星は通常異なった方向に回転している4個の回転儀を持ち、3軸方向の回転安定性と1個の予備を供給するもの。

 Chu博士は数人の共同研究者とさらに小型、高速回転、軽量型回転儀の実証を目指して2年間のプロジェクトを開始しようとしている。重量低減により、衛星の打ち上げコストは、ポンド当りほぼ一万ドル安くなる。回転儀の重さは普通5〜10 ポンド、たまにもっと重いこともあるが、HTS回転儀は2ポンドより軽いと計算されている。従来の衛星用回転儀は、比較的大きく直径が約25cmであるが回転は遅い。

 衛星製作者は直径10 cmまで衛星を縮めるよう努力したが、そうすると同等の効力を維持するために回転速度をさらに速くしなければならない。しかしながら、より速いはずみ車は、より大きな摩擦に遭遇し、より早く摩滅し、より多くの電力を要する。これはまた、衛星の電力負荷を増すことに連なる。超伝導ベアリングを用いた回転体は、直径が2.5 cmまで小さくでき、摩擦なしに高速回転が可能であり、電力消費は少なくなるだろう。小型衛星を製作しているAero Astro社(バージニア州)のR.Fleeter社長はTCSUHの超伝導回転儀について「この新しい概念に大変興奮している。何故なら超伝導回転儀は小さな箱に多量の回転運動量を詰め込む一つの有力な方法であるからだ。」とコメントしている。また、衛星産業界が、宇宙空間で実証されるまでは新しい技術を採用しようとしない、と警告もしている。

 Chu博士は、冷凍機技術が今まで大きな障壁になっていたと考えていただけに、昨年からの低温冷凍機技術の進展の結果、本プロジェクトに注ぐ情熱はますます高まってきた。今や博士は、このプロジェクトがNASAにより受理されれば、プロジェクトに参加する2〜3名の専門家の支持を取り付けている。Chu FW(はずみ車)グループに加えて、当提案協力者にはNASA GoddardのC.Glagett氏(従来の衛星搭載FWに関する専門家)が含まれている。

 Chu博士は、最初、標準回転儀上にベアリング移植を行い、次に小さなプロトタイプを試作して、後日宇宙へ送り出すという計画を提案している。

(こゆるぎ)