SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 4, Aug. 1999.

1. 超電導センサー免疫反応診断に進出―応用無限に
―九州大学―


 SQUID(超電導量子干渉型素子)による磁場計測は微弱磁場の検知に威力を発揮することから、脳磁研究に使われているが、さらなる用途開発が望まれていた。今回、まったく新しい考え方による用途開発が抗原抗体反応と関連してなされ、その用途は無限に広がる可能性がでてきた。

 九州大学大学院システム情報科学研究科円福敬二助教授と農学研究科遺伝子資源工学専攻の久原哲教授らは共同で、高温超伝導SQUIDをセンサーに用いる、高感度免疫反応診断装置を開発したと、7月28日九州大学ベンチャービジネスラボを通じて公表した。

 本発明の原理は、病原菌やウィルスなど抗原の存在を知りたい時、その抗原を結合用抗体を使って、基板上に吸着させる。さらに、磁性微粒子をマーカーとして付けた抗体を、吸着された抗原の上に、重ねて吸着させる。これを磁場で検知しようというものだ。すなわち、同氏らは、この方法によって、従来の光学的検知法よりも、ある種の抗原ではすでに現状装置で4倍、改良により100倍も感度の高い検知ができることを示した。

 50ナノメーター程度の径の磁性微粒子を抗体に組み込んだ検出用抗体を作製すること、それを、SQUIDで高感度に検知するという組み合わせが新たなアイディアである。検出用の抗体は種々のものが作れるので、原理的には病原菌、ウィルスなどの検査、ガン、エイズ、肝炎などの診断などの他、環境ホルモンの検知としての可能性、あるいは、遺伝子情報の解析装置としての用途も開かれることが考えられ、医学、薬学、生物学などの分野で、その応用は無数にあると考えられる。

 要は、検知感度がその他の方法よりも優れるかどうかで優劣が決まることになる。今後このような方法で、種々の生体系への計測応用が試みられると考えられる。

(JJY)


図 SQUIDを用いた抗原抗体反応センサーの概念図と磁性微粒子を組み込んだ抗体