今回、(株)神戸製鋼所とジャパンマグネットテクノロジー(株)は直径100 mmの室温ボアに10 Tをわずか8分で発生する超電導マグネットを開発した(写真)。今回製作されたマグネットはNb3Sn超電導体のみを用いて製作されている。NbTi超電導体の転移温度が9 K程度であるのに対してNb3Snの転移温度は18 K程度と高い。また、使用されている小型冷凍機の冷却能力は温度の上昇とともに増加する。このマグネットはこれらの特性を積極的に利用して設計されている。つまり、Nb3Sn線材のみを用いて設計することで、超電導マグネットの運転温度をNbTi併用型のマグネットに比べて高く設定し、冷凍機の冷凍能力が4 Kで使用する場合の数倍確保できる領域で運転するようになっている。また、使用されたのは一般に流通しているNb3Sn線材であるので、酸化物超電導体に比べ安価で、性能も安定している。さらに、マグネット内部の温度分布をできるだけ均一化するようなコイル配置と冷却構造が開発された。これらにより8分で10 Tを発生することに成功した。
写真は回転機構がついたモデルであり、ボアの方向を水平と垂直両方に切り替えて励磁が可能である。また、バイポーラの電源を組み合わせたことで、磁場を-10 Tから10 Tまで、連続で設定可能であるという。
諸元を表に示す。
(Rokko)
写真
寸法 φ830mm×H 1250 mm 貫通ボア直径 100 mm
中心磁場 10 T 磁場均一度 0.1 % (10 mmDSV)
定格電流 120 A 励磁速度 10 T / 8 min
冷却速度 (60 Hz zone) 60 h