SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 3, June. 1999.

4.高温超伝導SQUIDの新機種「SEIQUID」を発表
_住友電工_


 最高応答周波数1MHz、パソコンによる自動計測など大幅なバージョンアップ

 住友電工では、高温超伝導薄膜を用いた超高感度磁気センサ(SQUID)の性能を大幅に改善した磁気センサ「SEIQUID」を1台約300万円で発売した。磁気分解能1 pT/√Hzの性能で、応答周波数を従来の1 kHzから1 MHzと3桁改善した。非破壊検査や地質調査への利用を拡大するとともに、パソコンによる自動計測に対応した実用的な製品として開発した。微小磁気計測を利用する大学研究者や企業向けに販売する。

 住友電工の従来製品「SQUIDキット」の電子回路では、SQUID素子に微小な変調磁場を印加して、磁気信号をとらえる変調方式を用いていたが、信号処理が変調周波数によって制限され、1 kHzまでの計測しかできず、高速信号への追従性が低かった。そのため、生体磁気計測には問題がないものの、パルス信号の誘導を利用する非破壊検査や地質調査などの計測において有効な活用が難しかった。「SEIQUID」では、変調磁場をもちいず、磁気信号を処理する非変調回路を新たに開発し、応答周波数を従来の1 kHzから1 MHzと3桁高速化した。また、SQUID素子にコイルを設置して、SQUIDが捕らえた磁場を正帰還して磁気感度を増加させるAPF(Additional Positive Feedback)方式を採用した。さらに、雑音低減のために、プリアンプを電子回路から分離して、素子近傍に配置可能とするとともに、素子に発生する磁束トラップを取り除くヒータを素子に取り付けた。また、バイアス電流調整など従来煩雑であったSQUID素子の計測作業を、パソコンにより自動制御することを可能とし、データ収集や解析もパソコンで簡単にできるようにした。付属するパソコンのソフトウェアを用いることにより、簡便な微小磁気計測ができる。以上のようにSQUIDの最新技術を大幅に盛り込み、かつパソコンで簡単に操作可能なSQUIDが開発されたことで、SQUIDが身近な計測機器として、活用されることが期待される。本製品は4月14-17日、東京ビックサイトで開かれた「第20回センサと計測・制御機器総合展」に出展された。会場では、液体窒素を使って実際に計測デモが行われ、ノートパソコン上の簡便な操作で安定した動作をしており、高温超伝導体の応用製品が、ここまできたかとの感想である。

 開発責任者である住友電工伊丹研究所の糸崎秀夫氏によると「SQUIDキット」のユーザは医療診断、非破壊検査、地質調査など多岐にわたっているが、検出信号の高速化などの要望が高かったことから、今回の製品開発となったとのことである。「SQUIDキット」は、SQUIDの基本を理解するための入門機、教育機器として販売を継続するとともに、新製品「SEIQUID」はSQUID磁気センサの実用的な利用をめざした研究開発者向けに販売を進めるとのことである。なお、住友電工のSQUID情報については、ホームページ http://squid.sei.co.jp に掲載されている。

(烏賊)


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