SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 3, June. 1999.

2.超電導電力貯蔵(SMES)用モデルコイルの通電試験完了


 通産省資源エネルギー庁は、日本における本格的なSMES開発の第一歩として、小規模SMESパイロットプラント(電力貯蔵容量100 kWh級、出力20 MW)建設に必要な要素技術を確立するためのプロジェクトを1991年から開始、1999年3月に完了した。去る3月17日、東京・九段会館にてこの8年間のプロジェクトを総括する成果発表会が開催され、試作されたSMESモデルコイルの断面サンプルが披露されるなど盛況のうちに閉会した。

 このプロジェクトは、(財)国際超電導産業技術研究センター(ISTEC)が受託し、これに学識経験者・電力会社・メーカーが参画して推進された。その一環として、開発要素の最も多い超電導コイルのモデルコイルを中部電力(株)と(株)東芝にて製作し、1996年に日本原子力研究所(原研)との共同研究で基本的な性能評価試験を実施した。その後、日米の国際協力の下、1997年に米国ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)へ輸送、LLNLの試験設備に組み込み、1998年に長期繰返し通電試験などを実施、国内に持ち帰り解体調査を含む最終評価を行い全日程を完了した。

 モデルコイルの諸元は表の通り。パイロットプラントは12個の要素コイルをトロイド型に並べて構成される。モデルコイルは,要素コイルと内径/外径が同じで、厚さを1/2としたコイルである。超電導導体は、直径0.62 mmのNbTi超電導線972本をステンレス管内に納め、冷媒として超臨界圧ヘリウム(SHe)を超電導線とステンレス管内に強制的に循環させて冷却する強制冷却導体(CICC)を採用した。コイル入口温度は4.5 K、コイル全流量26 g/sである。パイロットプラントの設計点は、20 kA,5.6 Tであり、モデルコイルでは40.53 kA, 5.7 Tの通電を達成した。また、初期冷却・昇温特性、圧力損失特性、侵入熱特性、流量バランス、接続抵抗、熱擾乱限界値、臨界電流、交流損失などの測定、パイロットプラント運転パターンでの繰り返し通電、機械強度試験などの実証試験を行った。(株)東芝で技術取り纏めを行った超電導技術担当の手塚グループ長は「強制冷却方式のSMES用大型超電導コイルを試作し、熱擾乱に対する高い安定性、繰り返し通電試験による機械的な健全性、および、高電圧に対する高い絶縁性能など期待した性能を実証できた。SMESの市場ニーズは高く、今後、経済性と信頼性を確立し、早期の実用化を計りたい」と語っている。

(でんきっこ)