SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 3, June. 1999.

15.日本企業含む3社から
移動体通信基地局用HTSフィルター受注
_コンダクタス社_


 本誌99年2月号(Vol.8 No.1)で、STI社(Superconductor Technologies Inc.)が、約100台の移動体通信基地局向けHTS高周波フィルターを受注したニュースを紹介した。今回は、双璧のもう一方であるコンダクタス社の最近の動きを紹介することとする。

 この度、コンダクタス社は、新たに3社から数台の受信器フィルター"Clear Site"TMを受注したことを明らかにした。受注の1つは、日本の移動体通信業者大手からのもので、他の2つは米国内業者からのものである。第1の注文は、コンダクタス社が"第3世代高性能型無線現場試験用システム"と名付けたシステムに対するもので、日本の大手移動体通信業者からのOEM注文である。この数台の納入は、今夏中に予定されており、将来この業者を通じて広範な商業的採用の可能性があるという。コンダクタス社のJ.Simmons副社長は「この注文は、コンダクタス社にとって大きな前進となるものである。というのは、これらは第3世代の現地試験に参入する最初の当社製品だからである。現在、実験室テストがほぼ完了しており、実使用での性能データが集められるだろう。それは現地試験によってのみ可能であろう。当注文は、将来におけるコンダクタス社の大きなビジネス機会を示すものになるかもしれない。第1世代の無線システムは、全アナログ方式であった。第2世代はデジタル方式であり、違った通信インタフェース規格(CDMA、GSM、TDMA等)を採用している。第2世代は、アナログ方式に比し、向上した性能と容量増加を提供する。これら第2世代システムは、全米に亘って広く利用されており、移動体通信業者とPCS業者の両方がサービスを行っている。第3世代システムは、高バンド中デジタル交信を提供でき、音声通信だけでなく、高速データ・インターネット通信及び圧縮ビデオ通信をも担うものである。産業アナリストによれば、第3世代による商業的通信は、2〜3年以内に開始するだろう」という。

 米国内の2業者からの注文は、アナログ及びデジタル方式に対するものである。その内第1の業者は、最近他の方法では失敗した交信保持問題を解決するべく、現地試験を実施した。当業者は、この問題を解決する為、当初相当な犠牲を払って、セル基地を追加設置する計画であったが、"Clear Site"を設置することにより、この高価な支出を避けることが出来たという。Simmons副社長は、「"Clear Site"の採用によって、通信網の動作成績が顕著に向上し、交信困難性問題が直ちに解決した。今や低パワー携帯電話によるテストでは明瞭な音声品質を示しており、以前は不能区域であった所を通過中であっても交信脱落は起きなかった。新中継所の設置コストは、数10万ドル台に在る。」と語った。米国内の第2の業者は、現地テストの為、数台の"Clear Site"を発注した。その目標は、携帯電話の交信区域を拡大し、競争力を高め、市場でのシェアを増やすことである。

 4月上旬、コンダクタス社は、上記の高性能型(16極)受信器フィルターを、日本規格周波数帯に於ける現地テストの為、日本の大手通信業者へ出荷した。共振器の極数は、フィルターの選択性あるいは鋭敏さの一指標である。より多くの極数を有するフィルターは、基地局受信器の動作性能を阻害する信号干渉をより少なくすることが出来る。今日移動体あるいはPCS通信に使われている従来のフィルターは、通常11ヶかそれ以下の極数を持っている。これら11極の従来フィルターは、16極フィルターと比べ、干渉防止性能は低く、高いノイズ水準をもたらすのが一般的である。

 コンダクタス社によれば、この16極"Clear Site"システムは、典型的には60dBの選択性基準で2.5MHzの有効帯域巾拡大を可能とすると同時に、従来の11極フィルターに比して1dBのノイズ低減を達成するものである。この業者にとっては、選択性の向上は通信容量の増大及びより細かな用途区分の可能性を意味し、従って中継所当りの年率収入が数10万ドル増加することを示している。ノイズ水準の低減は、感度の改善を意味し、従って交信保持区域の拡大と電話品質の改善につながる。従来のフィルターは、通常選択性の向上と同時にノイズ水準を低減することは出来ない、しかしコンダクタス社の技術を利用する当業者はこれら両方のメリットを享受できる、という。

(高麗山)