SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 3, June. 1999.

13.Na0.05WO3(Tc = 91K)の超伝導??が報告される


 High-Tc Update(Vol.13, No.9, May1, 1999)は「S. ReichとY. Tsabba ( Weizmann Institute )が、NaがドープされたWO3単結晶において、Tc = 91 Kの超伝導を示唆する測定結果を得た」と報じた。WO3粉末とNa(0.5 atom%)を用い、Ptチューブ中での昇華法 (1370 ℃) によって得られた単結晶は、数百mm角の立方体で、XPSによって求められた表面組成はNa0.05WO3であった。磁場100 Oe下(ZFC)での帯磁率の温度依存性には91 Kにおいて反磁性の急激な増大が見られ、70 Kでの帯磁率の磁場依存性には小さなヒステリシスループが観測された。しかし、反磁性帯磁率の増大は磁場1000 Oe下では劇的に減少し、また抵抗率は高く、その変化も1/3程度(300 MΩ(100 K)から100 MΩ(50 K))と小さい。著者らは、絶縁体であるWO3の表面のみがNaドープによって2次元超伝導体になるものと結論付けている。

 タングステンブロンズは、その誘電性や電子ドープされた時の金属導電性から、これまで多くの研究がなされてきた系であり、今回超伝導性が報告されたことは興味深い。もしも、これが真の超伝導であると、層状でない3次元構造の化合物としては初めて液体窒素温度を越える臨界温度を有することになる。しかし、High-Tc Updateがこれまで一面トップ記事で報じた"新規"`超伝導体の中にはBaxNbO2-δ(Tc 〜20 K ; Vol.8, No.24, 1994)、Bi-Sr-Ca-Cu-O系 (Tc 〜 250 K ; Vol.8, No.1, 1994) など、結局はUSO(Unidentified Superconducting Object)に終わった物質も多いことに注意したい。

(Wild Cats)