溶融法で作製されたNd系溶融バルクは高いピン止め力を有するため高温超伝導の応用材料として期待されている。しかし、これまでは試料作製時に容易にクラックが発生して、大型のc軸配向単一結晶粒からなる試料を得ることが困難であった。そこで同グループは、先に銀添加によりSm系の試料作製に成功した経験を生かしてNd系に銀を添加したところ、クラックの発生を抑えることに成功した。これは展延性に富む銀が試料に生じる歪みを緩和するため、と考えられる。
図に直径30 mmのNd系溶融バルクの77 Kにおける捕捉磁場分布を示す。磁束密度分布は円錐状で、クラックまたは弱結合のない単一結晶粒であることが分かる。また、試料中心部にホール素子を貼り付けて測定すると、0.83 Tの磁束密度を捕捉していた。これは同グループが以前に同サイズのSm系溶融バルク体で記録した値よりも小さいものの、Nd系には作製プロセスの最適化によって記録が向上する可能性があり今後の動向が楽しみである。
今回バルク作製に成功した名大大学院生の細川哲央氏は「一年間苦労した甲斐があった。しかし、これからです」とコメントしている。
なお、イムラ材料開発研究所における研究の一部は中部通産局によるエネルギー使用合理化新規産業創造技術開発費補助金により実施されている。
(BDFC)