当トランスは、ASC社から供給されるHTS線を用いて、ABB電力技術開発会社が製作することになろう。パートナーのAPC社(Air Products & Chemicals)が変電所に設置し、試験するHTSトランス装置用極低温冷却システムの開発を担当する。ロスアラモス国立研究所(LANL)は、本プロジェクトの期間に亘って、HTS線と諸部品の特別な品質評価・試験を担当する。
1998年のWire & Cable国際シンポジウムに於ける発表の中でABB社は、従来のトランスに対比して、HTSトランスのメリットとして、3つの重要項目−@全損失、A重量、B全コストを挙げた。従来機数値に対するHTS機数値の比は、上記項目に関して各々30%、45%、80%であるという。これらの計算は、容量100 MVAのHTSトランスに基いてなされたものである。HTS線の性能としては、臨界電流密度Jcが10,000A/cm2、AC損失は0.1 Tの並行磁場中で0.25 mW/Amを仮定している。しかしながら、ABB社の論文中には、上記のメリットは単独機の用途に対しては重要であるが、そのような用途は特殊な狭いマーケットを成すだろう。広範なマーケットを拓くためには、より大規模な運転系統網と効率的メリットが望まれる。
ここ数年間にわたって、ABB社はHTSトランスの限流能力の重要性に着目し確証してきた。この限流能力は、系統網に新しい便益をもたらすからである。ABB社が現在開発中のHTSトランスは、数多くの改良的特徴を提供し、従来のトランスと対比して全く新しい機能的有利性を導入することになるだろう。サイズ、重量、効率及び環境上の便益に加えて、系統上の改良的便益には、以前には無かった事故電流の限流機能が含まれる。この機能には、系統の諸部品の保護とコスト低減が期待される。さらにもう1つ、系統電圧の制御性を改善する運転インピュータンス低減のメリットが含まれる。
なお、ASC社の新聞発表によれば、最終的にHTSトランスで代替され得る容量が30 MVA以上のトランスの市場規模は、30億ドル/年と予想されている。
(こゆるぎ)