通常、AC電圧及び電流の計測は、電気を印加したとき、その温度が良く定義され、かつ、予測される仕方で上昇するような熱伝達標準装置を用いて行われる。ある未知のAC信号を同装置に印加し、温度上昇を記録する。そして、既知のDC信号を印加し、同じ温度上昇が得られるまで調整する。このようにして未知のAC信号と既知のDC信号との比較が確立する。もし、伝達標準の誤差が判り(NISTが検定している)、DC信号が既知であれば、AC電圧または電流を決定することができる。
現行の熱伝達標準は、室温で動作するもので、使用している温度センサの性能と極低温であれば低減できる他の効果によって制約されている。超伝導センサは、きわめて感度が高いので、mWのオーダ−で動作するのに対して、従来の熱伝達装置が動作するには、数10 mWを要する。このような動作温度と動作電力の低減により、前例のないほど低い信号レベル、かつもっとも良い室温計測に匹敵ないしは凌駕する精度レベルでの比較が可能になったといえよう。
(高麗山)