SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol. 8, No. 2, Apr. 1999.

6.SMES装置をオーストリアの電力会社へ納入
_ASC社_


 このほど、ASC社(米国)は、自社製SMES(超伝導エネルギー蓄積)装置を初めてSTEWEAG社(オーストリアの電力会社)へ販売したと発表した。また、ASC社のSMES技術を欧州で販売・分配するため、ATEWEAG社と最初の販売代理店契約を締結したことを明らかにした。

 ASC社のG.Yurek社長は「今回の販売は欧州地区でSMES装置の販売を促進する出発点をなすものである。と同時に、産業の電力品質向上の要求に応えるため、SMES装置の使用を最近考え始めている欧州地区の顧客にとっても重要な示唆を与えるものと思う」と語った。一方、STEWEAG社のH.Zankel社長は「ASC社のSMES装置は産業用電力の品質問題を解決する為に市場にある先進技術といえよう。我々は、欧州では最初のこの装置を据え付けられるのを喜んでいる。今後、オーストリアや他の欧州諸国の産業界へこの高付加価値のサービスを導入できるよう期待している」とコメントした。

 この欧州最初のSMESに基づく電力の品質改善手段は、99年春オーストリア、グライスドルフ市にあるアルミニウム工場に設置される予定である。当工場は、今までにたびたび重大な操業停止を経験している。この停止は、この工場所在地域に特有の落雷による電圧の瞬間的低下事故によってもたらされるものであった。ASC社は、SMES装置によりこれら電力の品質問題は100%解決できると予想している。

 今回の販売・分配契約締結の時期は、非常に重要である。この締結は、全ヨーロッパ電力産業の規制緩和が99年2月に施行される直前に行なわれたからである。「この新しいSMES装置の販売・分配システムは、欧州の産業顧客"選択40"に対する我々の最近の市場調査結果に適合するものである。ここで"選択40"の顧客というのは年間40 GWhr以上の電力を使う、従って自由にエネルギー供給者を選択できる顧客を指している」とZankel氏はコメントした。

 EDF社(Electricite de France)は、世界的大電力会社の一つであり、97年4月以来ASC社と戦略的提携関係を保持しており、また、STEWEAG社の株式25%を保有している。EDF社のR.Ballay副社長は、「SMESに基づく電力品質改善装置は、電力会社に対して、マイクロプロセッサーによる生産ラインの運転・制御など、電力品質により敏感な操業のため高い電力品質を追求しつつある顧客のための改善案を提供するものである。我々のパートナーSTEWEAG社は、今後、フランスあるいは他の欧州諸国に対してSMES販売の拡大を期待している」と語った。

 STEWEAG社は今後、契約条項に従って同社の商業および工業的顧客に対してASC社のSMES装置を売りこむことになろう。ASC社はFDF社と共同でSTEWEAG社の営業マン及び技術者に営業・顧客サービス訓練と技術的支援を提供する。最近ASC社は、さらに米国および世界各国の電力会社とのSMES装置の販売・分配契約締結の交渉を進めている。具体的にいえば、南アフリカのEskom社と米国ノースカロライナ州レェイレイ市のカロライナ電力・電灯社などが含まれている。

 その後の新聞発表によればASC社は、99年3月中旬に実際にSTEWEAG社向けSMESをバルチモア港から出荷した。4月中に顧客の現場への設置に間に合わせるためである。ASC社のYurek社長は「わが社のチームがSTEWEAG社の要請に迅速に対応できて嬉しい。これでオーストリアの落雷シーズンにおける電圧低下事故の防止に間に合うことになるだろう」と語った。

 このニュースに接して東芝・電力産業システム技術開発センターの前田秀明氏は「SMESには系統自身を強化するタイプ(系統安定化など)と、需要家端で特定の需要家を保護するタイプ(瞬停用など)がある。欧州では後者の需要家端用のSMESについても、電力会社とメーカーが提携して販売・メンテを進めている様子が伺えて興味深い」とコメントしている。

(YF)