この有限な抵抗値は電力を出し入れする際にジュール損失となってSMESの効率を低下させる要因となる。これに比べ、機械式スイッチはオフ(開極)時には抵抗無限大となり効率上もっとも好ましい。しかしながら、これまで機械式スイッチはオン(閉極)時抵抗の高い常電導接点が使用されてきた。超電導接点によるスイッチは研究事例はあるものの、数百A程度の電流容量が確認されている程度で今回のDC4500 Aは単極の真空スイッチを4並列接続して達成したもの。単極通電では1800-1900 Aを記録している。オン時接点抵抗は0.1 nΩ(検出感度)以下であった。
ここに到るまでに、接点形状、接点表面処理、NbTiフィラメント径の諸条件をいろいろと変えて、サンプル実験を繰り返した。接点抵抗が低いことは初期の段階から判明していたが、kA級まで通電容量を上げるところに苦心した。接点形状に凸凹の球面を取り入れること、接点表面を滑らかに仕上げることによって電流値の上限値の引き上げに成功した。なお、同「要素技術開発調査」における永久電流スイッチの開発は平成10年度をもって終了となる。
以下は開発に携わった三菱電機のメンバーのコメント。
生産技術センター・薮内専任「接点の機械加工を担当した。超電導のことは専門ではないが、担当者が相談にやってきたので今回の方法を提案した。良い成果が上げられたと聞いてうれしい」
先端技術総合研究所・久保専任「はじめにNbTiバルク材で試してみた。接触抵抗が非常に小さく、やってみる価値があると思った」同研究所・岸田研究員「高速真空スイッチの開発を担当している。アークが接点の超電導材料を傷めないかが一番気掛かりだった」
同・津田専任(取り纏め)「はじめ電源開発からこの話があったとき、このスイッチがあったら何ができるようになるかを考えた。どうしたら作れるかを考えたのはその後だった。チャレンジして良かったと思う。機械式スイッチはいろいろな使い方ができそうなので、SMESに限らず、今後は応用も考えていきたい」
この成果は3月17日、東京・九段会館で行われた「超電導電力貯蔵システム要素技術開発調査」成果発表会で報告された。
(やればできる)